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「血圧の低下や失禁などを伴い、生命に関わる危険性も」食べる・吸う・触れるなどの日常行為で発症しうる“食物アレルギー”のリスク

『大人の食物アレルギー』より #2

2022/03/17

 運動によってなぜアレルギー症状が出やすくなるのか、そのメカニズムはすべて明らかになってはいませんが、腸管の透過性(物質の通しやすさ)が亢進し、未消化のアレルゲンが吸収されて血液に流入してしまうのが最も大きな要因と考えられています。

 ちなみに、食物に関係なく運動しただけでアナフィラキシーを発症する運動誘発アナフィラキシーという疾患もありますが、きわめて稀です。

 食物依存性運動誘発アナフィラキシーを発症した患者さんで、原因食物がなかなか同定できないことは珍しくないのですが、運動自体をやめてしまう必要は通常ありません。

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●口腔アレルギー症候群(OAS)

 原因食物を食べた後、唇、口の中、咽頭といった口腔粘膜に限って、かゆみ、イガイガ、ヒリヒリした痛み、腫れ、血管浮腫といった症状があらわれる、成人がかかりやすい特殊型の食物アレルギーです。

 カバノキ科花粉アレルギーの成人が、バラ科の果物(リンゴ、サクランボ、モモ、ナシ、イチゴ、プラム)を生で摂取したためにアレルギー症状を引き起こすケースが多くあります。

モモや大豆によるアナフィラキシーショックも

 症状が口腔内に限定され全身に至らないのは、アレルゲンが胃液や消化酵素に弱いため、小腸に到達する前に容易に消化されてアレルゲン性が失われてしまうからです。

 とはいっても安心はできず、時にはモモや大豆(特に豆乳)によって、アナフィラキシーショックなど重篤な全身症状を引き起こすことがあるので注意しなければなりません。

 原因食物の果物や野菜を除去するのが治療の基本ですが、加工品や加熱処理をしてあると症状が出にくくなるため、食べられる可能性もあります。

前編を読む

大人の食物アレルギー (集英社新書)

福冨 友馬

集英社

2022年3月17日 発売

「血圧の低下や失禁などを伴い、生命に関わる危険性も」食べる・吸う・触れるなどの日常行為で発症しうる“食物アレルギー”のリスク

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