毎年春先になると、花粉によるアレルギー「花粉症」によって、くしゃみや鼻水、目のかゆみなどの症状に悩まされる人が多いのでは。そんな花粉症と並んで患者数が増え続けているのが、食品などの摂取によって起こる「食物アレルギー」だ。
ここでは、国立病院機構相模原病院臨床研究センターの福冨友馬氏の著書『大人の食物アレルギー』(集英社新書)から一部を抜粋。成人の10人に1人に症状があると言われている「成人食物アレルギー」について紹介する。(全2回の1回目/後編に続く)
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成人食物アレルギーの人の割合は1~2%
特定の食物が原因となって、かゆみやじんましんといった不快なアレルギー反応を引き起こすのが食物アレルギーです。中でも、即時型食物アレルギーといわれるものは、原因食物を取ってから通常数分から2時間以内(稀に4時間以内)にさまざまな症状があらわれる可能性があります。
先述の通り、食物アレルギーというと子どもの疾患とイメージされやすいのですが、16歳以上の成人になって新たに食物に対するアレルギー症状を訴えて来院する患者さんは少なくありません。
欧米のあるアンケート調査では、成人の12%が、食物に対してアレルギー症状が出ると自己申告しています(Woods RK, et al : Eur J Clin Nutr. 2001 ; 55(4) : 298-304.)。
しかし、アレルギー症状が出ると訴える人すべてが、食物アレルギーと診断されるわけではありません。欧米の医療機関の調査によると、アレルギー検査の結果、実際の成人食物アレルギーの有病率は2~5%程度であると報告されています(Rona RJ, et al : J AllergyClin Immunol, 2007 ; 120(3) : 638-46. )
私が以前に行ったインターネットモニター集団を対象にしたアンケート調査でも、20~54歳の12%が、 「特定の食物を食べた後にアレルギー症状が出る」と回答しています。
わが国ではまだ、成人食物アレルギーの正確な有病率は明らかになっていませんが、成人の1~2%程度ではないかといわれており、これらの数字はいずれも欧米の報告と類似しています( 『食物アレルギーの診療の手引き2020』 「食物アレルギー診療の手引き2020」検討委員会、研究開発代表者:海老澤元宏)。