1:「専守防衛」を見直し、「反撃能力」を持つべし
私たちは提言で、「議論が必要と思われる防衛政策」として、3つの項目を挙げた。(1)「専守防衛」の見直し、(2)「総合的な抑止戦略」の構築、(3)防衛費のGDP(国内総生産)比2%への増額だ。
このうち、まず、なぜ専守防衛の見直しが必要なのかを説明したい。わが国で初めて専守防衛の理念を正式に説明したのは、1970年に発表された初めての防衛白書「日本の防衛」だった。ここで「わが国の防衛は、専守防衛を本旨とする」と明記され、「専守防衛は、憲法を守り、国土防衛に徹するという考え方である」と定義している。当時の日本は佐藤栄作内閣で、国際社会はデタント(緊張緩和)の時代であり、最大の脅威はソ連で、中国に対外進出の意欲はなかった。
定義された専守防衛には抑止力の概念が含まれていない。国土防衛には、「相手に攻撃を仕掛ければ痛い目に遭う」と思わせる「抑止力」が重要だが、この「抑止力」について、極論すれば日本は米国に任せっきりだった。自衛隊は、「攻めてきたら領土内で守る」という受動的で必要最小限の「対処」を考えるだけで済ませていたのだ。しかし、それは冷戦時代のソ連を除き米国の軍事力に挑戦しようとする国が一国もなかった時代だから許されたことを認識する必要がある。
日本は「盾」、米国は「矛」という完全な役割分担の時代は終わった。専守防衛を国是とする以上、先制攻撃を行うわけにはいかないが、相手に「日本を攻撃すれば、同じような反撃に遭うから攻撃はやめておこう」と踏み止まらせる抑止力は、米国に頼るばかりではなく自前で補う必要がある。
今、日本では「敵基地攻撃能力」に注目が集まっている。今年1月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)の共同文書が発表された際も、敵基地攻撃能力の是非を取り上げる報道が目立った。しかし、私たちは議論が攻撃にばかり集中することに懸念を抱いている。敵基地攻撃能力とは、弾道ミサイル発射基地等、敵の基地を直接破壊できる能力を意味する。「攻撃」という言葉に拒否感を覚える人も多いだろう。「何が敵基地なのか」という目標議論に嵌(はま)ってしまい堂々巡りになる恐れもある。我々は敵基地攻撃能力に替えて、「反撃能力」という言葉を採用した。