――事前チェックのようなルールはないのですね。
山下「“チェック”というと、不都合なところを削除するような印象も与えます。先ほどお話ししたような事実確認作業を行うことはあっても、何をお話しになられるかは基本的に自由です。私のような報道担当の職員も、当日ご発言になるまで内容はわかりません。皇室の方々がご自身の発言の影響力などに配慮して、お話しされていると言えます。少なくとも戦後の天皇や皇太子で、ご自身の言葉で話されると誤解を招く心配があった方はいらっしゃいませんでした」
「愛子内親王殿下がご両親を前に練習されていたりしたら」
――会見の段取りについて、リハーサルをされたりはするのでしょうか。
山下「記者会見場の様子くらいは事前にご覧になるでしょうが、報道担当も含めたリハーサルをやったことはありません。お話しされる内容をまとめてご自身で練習されることは当然あると思います。これは私の勝手な想像ですが、愛子内親王殿下がご両親を前に練習されていたりしたら微笑ましいですよね」
――ご両親は記者会見の大先輩でもありますし、ご相談されることは自然に感じます。会見の当日に、ご両親やご兄弟が心配して見に来られることもあるのですか?
山下「ご家族も事前に記者会見場の様子くらいはご覧になるかもしれませんが、記者会見中は当然、ご本人だけです。ご両親は別室でやきもきしながら無事に終わるのを祈っておられるでしょうね」
――皇族の方々が行事などに臨まれる際は服装や髪型にも注目が集まりますが、それもご自身で決められることが多いのでしょうか。
山下「宮中行事のようなドレスコードが決まっているものは別として、基本的に自由に選ばれていると思います。清子さんも20歳の記者会見の時はアイボリーのセーターに黒のスカートという服装でしたが、ご自身で決められたのだと思います。外国ご訪問や成年行事のようなときは、外部のヘアドレッサーに委嘱することもあります。上皇陛下や今上陛下のところへは赤坂の理髪師の方がきていましたが、私的な領域なので詳細は知りません」
――清子さんは記者会見の前後で緊張された様子などはありましたか。
山下「記憶にありませんが、普段から物静かでいつも落ち着いておられたような印象はあります。ご家庭でもご両親とお2人の兄の調整役というイメージで、いつも家族全員がうまくまとまるようにと配慮されていらっしゃいました」
「もしかしたら犬をいじめていると勘違いされたのでは」
――会見からも柔らかいご性格は本当に伝わってきます。
山下「私は清子さんについて、1つ忘れられない出来事があります。昭和時代の話ですが、清子さんが可愛がっていた狆という種類の犬がいました。私が東宮御所に伺った際、廊下にその犬がいたので、追いかけてじゃれていたんです。犬が廊下の角を走って曲がったので私も走って追いかけたら、曲がったところに清子さんがいらっしゃって、ぶつかりそうになってしまったのです。立ち止まって恐縮している私に、清子さんは犬を抱っこしてにっこり微笑まれたのですが、私としては『もしかしたら犬をいじめていると勘違いされたのでは』とますます恐縮してしまって……(笑)」
――清子さんの対応力に救われたのですね。
山下「本当にそうですね。清子さんは覚えておられないでしょうが、私は一生忘れないでしょうね」
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