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「ジョーが楽器を吹けなくなる。取材させてほしい」とプロデューサーが…「職業性ジストニア」を発症した元サックス奏者が、『カムカム』の音楽を手がけるまで

「ジョーが楽器を吹けなくなる。取材させてほしい」とプロデューサーが…「職業性ジストニア」を発症した元サックス奏者が、『カムカム』の音楽を手がけるまで

2022/03/22
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 ですから『あさイチ』(NHK)に出演した際、「ジョーは働いていない」という非難に対して、思わず「ジョーを責めないで」と言ってしまったのです。ジョーが無職であることが話題になったら、ネタバレにならないように「今後のジョーに期待してください」とだけ言おうとドラマ班のプロデューサーと打ち合わせしていたのに、生放送のトークは何が起こるか分からない。ジャズのセッションみたいです。

ジョーは「育メン」 るい夫婦は「足るを知る」

 るいが、トランペットを吹けなくなったジョーと結婚したのが1964年。そこから20年以上、確かにジョーは働いていません。当時は高度成長期で、男は働いてナンボの時代。僕の父も朝から晩まで働きどおしで顔を合わせない日も珍しくなかった。働かないジョーに、世間の風当たりは強かったはずです。

(NHK提供)

 しかし、ジョーは今でいう「育メン」です。不器用ながらも自分にできることをやりつつ、精いっぱい家族を愛している。藤本さんは、ここは社会性のある題材の球を投げてきたと思いました。今では「ジェンダーレス」の概念が世間的な認知をされ、女性が働いて男性がそれをサポートしていたとしても本人たちが納得して幸せなら何の問題もない。るいとジョーのように常にお互いに優しく、あんなに楽しく子育てができている家庭はとても素敵ですよね。

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 視点を変えて、るいは、つつましい生活こそが幸せだと思っている。「足るを知る」を体現しています。これもまた「どこであなたは幸せを感じますか?」という、藤本さんからの投げかけとして僕はとらえています。

※全文は発売中の『週刊文春WOMAN vol.13(2022年 春号)』にて掲載。

Text: Atsuko Komine

 

かねこたかひろ/1964年東京都生まれ。大学時代よりサックス奏者として活動。94年映画『河童』で日本アカデミー賞音楽賞優秀賞を受賞。2006年サックスを吹けなくなり、作曲に専念。NHK『うたコン』指揮者、米米CLUB、BIG HORNS BEEなどのキーボード奏者としても活躍中。「金子隆博カムカムジャズバンド」の活動も開始した。『カムカムエヴリバディ』最終回翌日の4月9日(土)には、東京 LDH Kitchen THE TOKYO HANEDAにて、カムカムジャズバンド feat. BIG HORNS BEE「カムカムエヴリバディ クライマックス 打ち上げLIVE」を開催する。詳しくはhttp://g-kids.net/?p=2949

「ジョーが楽器を吹けなくなる。取材させてほしい」とプロデューサーが…「職業性ジストニア」を発症した元サックス奏者が、『カムカム』の音楽を手がけるまで

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