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グリコ・森永事件で毎日報道陣に詰め寄られ…前代未聞の大ヒット「老老介護ドキュメンタリー」はこうして生まれた

信友直子×大島新

note

映画をやるならドキュメンタリーだろうとは思っていた

大島 僕がフジテレビに入社した約25年前、若き名物ディレクターといえば信友さんでした。

信友 女だから目立ったというのもありますけどね。私からすると、あの大島渚監督の息子さんかと(笑)。フィクション映画を撮りたいとは思わなかった?

 

大島 それは全くなくて。僕には子供の頃の『愛のコリーダ』問題のトラウマがありまして(笑)。小学1年の時に『愛のコリーダ』(1976)が公開され、物心ついて最初の父の映画だったんですが、わいせつ罪に問われ、自宅に検察のガサ入れもあったし、裁判が5、6年続いてニュースになっていたので、学校では“エロ監督の息子”としてからかわれ、暗い少年時代でした。

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 ただ、映画をやるならドキュメンタリーだろうとは思っていました。子供の頃から伝記が好きで、これを映像でやりたいなと。大学では早大の探検部に入ったんですが、マスコミに進む人が多く、後にノンフィクション作家になる高野秀行さんが先輩にいました。

 

 当時熱心に見ていたのが、フジのドキュメンタリー番組『NONFIX』。映画監督になる前の森達也さんや是枝裕和さんが撮っていて、NHKのドキュメンタリーとはまた違う、作家性の強い作品が揃っていた。