文春オンライン

櫻井よしこが106歳の母を介護して考えた「日本的家族のあり方」

2018/05/04
note

 定年後をどう過ごすかが話題になっている。寿命が延びたことは喜ばしい半面、さまざまな問題が浮かび上がってきた。超高齢化社会を前に、私たちが取るべき対策とは。ジャーナリストの櫻井よしこさんが自身の体験を基に提言する。(出典:文藝春秋オピニオン 2018年の論点100)

長寿社会は望んだ姿か 

 今、日本は超高齢社会を目の前にして、大きな負担にあえいでいます。国民医療費は42兆円を超え、毎年ほぼ1兆円のペースで増加中です。国民1人あたりの医療費をみると、75歳未満は約22万円なのに対し、75歳以上のいわゆる後期高齢者は約93万円です。高齢化によって財政支出は膨張しており、医療費の国庫負担は年間11兆円、年金、介護などを合わせた社会保障関係費は32兆円超と、いまや歳出総額の3分の1を占めるほどです。

 苦しいのは国の財政だけではありません。高齢者を抱えた家族、それに高齢者自身にも大きな不安があり、少なくない負担に直面しています。年金の減額、貯蓄の少なさ、介護にかかる費用と手間、仕事との両立のことなど、考え始めれば、前向きに対処しようと努力しても、齢をとるにつれ、不安になります。

ADVERTISEMENT

 私たちの国、日本は戦後、長寿社会の道を選び、寿命を延ばし続けてきました。しかし今、眼前の長寿社会の実態を見つめ、それが私たちの望んできた社会だったのかどうかを考えるときだと思います。

©iStock.com