2021年最後のゲームは益田直也投手にとってあまりにもショッキングな幕切れとなってしまった。サヨナラドローとなるバスター。昨年11月12日、京セラドーム大阪で行われたクライマックスシリーズファイナルステージ第3戦。引き分けでもシリーズ敗退が決まるというシチュエーション。ロッテ1点リードの9回裏無死一、二塁の場面で打席にオリックス小田裕也外野手。バントシフトを敷く中、打者はバントではなくバットを引いて、強攻策のヒッティング。意表を突かれ投じた初球は無情にも一塁線を抜けていってしまった。天を仰ぐ。67試合に投げて38セーブを挙げチームの勝利に貢献し続けたマリーンズ不動の守護神は最後の最後はマウンドで立ち尽くすしかなかった。
「打たれた日はもともと眠れないタイプなのですけど、あの日はなかなか寝れなかったですね。目をつぶるとあのシーンが浮かび上がる」
益田はその夜の事を振り返る。何とか眠りにつくために少しばかりアルコールを口にした。苦い記憶。悔しい試合となった。
映像は後日、チェックをした。「嫌でもあの映像が流れている。テレビでもインスタやユーチューブなどのSNSでも。勝手におススメ映像として出てくるので、困りました」と益田。今でこそ冗談気味に振り返ることが出来るが、その時はなかなか厳しい状況だった。
「思い通りの投球ができなかったことが悔しかった。ただ、そこは自分の力不足、経験不足と素直に認めて次に進むしかないと思っていた。どこか向こうには余裕があって、こっちは追い込まれて後手後手になってしまっていた」
帰国するマーティンの見送りサプライズ
益田は3日後の11月15日、羽田空港にいた。帰国するレオネス・マーティン外野手をサプライズで見送るためだった。
「ずっと寄り添ってもらった。感謝の気持ち」と益田。ストッパーは並大抵の精神力では務まらない。何回抑えても一度、失敗をすると責任を一身に背負う。だから抑えを任された選手は長いシーズン、精神をすり減らしながら戦い続ける。そんなポジションを任された選手会長のことをいつも気にかけてくれたのがマーティンだった。
好投をすれば一緒に喜び、打たれれば気持ちを共有してくれた。益田が32歳を迎えた10月25日の誕生日には試合後に別室に呼ばれた。向かうと特製ケーキとプレゼントが用意されていた。嬉しかった。だから、帰国の日、約束をせずに見送りに行くことに決めた。空港で友の姿を見つけたマーティンと家族は驚き、そして大喜びをした。そして抱き合い、「来年こそは優勝をしよう」と誓い合った。いつまでもクヨクヨしても仕方がない。悔しさをエネルギーに変えた瞬間だ。
「言葉は通じないけど、気持ちは通じる。マーティンはいつもチームの事を考え、仲間たちの事を考えてくれている。つねにボクらのことを想ってくれている」と益田。