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新庄剛志BIGBOSSは何を起こすか…歓迎する人、不安に思う人、それぞれの思い

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/03/25

 チームが札幌ドームで全体練習に励んでいる頃、新監督は東京ガールズコレクションでランウェイを歩いていた。布袋寅泰さんの曲に乗せて、奇抜なブルーの衣装でスモークの中から派手に登場。青いペンライトが大量に揺れる様子を見て、「これいいね! ファイターズでもやろう!」と超ご機嫌。これがなんと開幕4日前の出来事。でも、もう私たちは驚かない。こんなことに驚いていたら、いま、ファイターズファンは務まらない。

 新庄剛志BIGBOSSが就任してから、とにかくいろいろな人から声をかけてもらう。手放しで「面白くなりそうだね!」と言う人はもちろん多い。久しぶりに連絡をくれて、今年からファイターズを見たいから予備知識を教えてと言ってくれた人もいた。私の担当するラジオ番組も新しいリスナーが増えている。もちろん、元々のファンも大いに盛り上がっている。シンプル過ぎると物足りなさを感じた新ユニフォームとプライマリーロゴにもあっという間に慣れた。グッズもチケットも売れ行き上々、BOSS効果と言って間違いない。

 BIGBOSSという呼び名はすぐにチームにもファンにも浸透した。就任会見で「監督って呼ばないでください、びっぐぼ~すでお願いします!」と襟を立てた衣装で笑いながら話したのが最初。2010年から暮らしたインドネシア・バリ島で現地の人からそう呼ばれていたという。軽い口調だったけれど、それはしっかり準備されたもので、その日の会見ではマスコミに「BIG BOSS」という肩書の名刺が配られた。

BIGBOSS ©文藝春秋

ガラポン打線は想像もしない打線を生む

 就任してからはいろいろな事が起こった。キャンプ、オープン戦での守備のシャッフル。初めは「お互いの気持ちがわかるようになるから」なんて笑っていたけど、もちろんそこには意味がある。特に外野手が内野を守ることには、ボールの処理が早くなって、外野に戻った時にカットマンへの送球が早く正確になるという狙いがある。更に複数のポジションを担うのは試合に出られる機会を増やすことでもある。とにかく試合に出たいという思いの若手にとっては大チャンスだ。

 ラジオ番組で試合のスタメンを発表するのも私の仕事のひとつだ。

「今日のスタメンはガラポンです」

 最初は冗談かと思ったのに、このフレーズにもすっかり慣れた。オープン戦、ファイターズにはスタメンの打順がガラポンで決まる試合とそうではない試合があった。そうではない試合は、今までで言うと普通のことなので、わざわざ紹介する必要はないけれど、ガラポンはまだ普通とは言い難いのでしっかりクレジットするようにしている。ガラポンを回す時の映像がチームの公式YouTubeで公開されるのだが、本当に選手が楽しそうで何度でも見たくなる。

 ガラポン打線は想像もしない打線を生む。選手は自分自身が打ったことのない打順になるとそこに新鮮さと工夫が生まれ、ベンチでは今までになかった並びから新しい作戦が生まれることもある。相手チームを翻弄するにも効果絶大だ。シーズンが始まってからもガラポンは使われるかもしれない。

 3月19日の試合ではファン投票で打順が決まった。事前投票数が多かった順に、1番から並んだのだ。実力で勝負の世界に人気を当然のことのように絡める。9人に入れなかった選手は悔しいし、入った選手はその期待に応えなければとプレッシャーが生まれる。そのプレッシャーに打ち勝つことが出来てこそ、スターになれる。ただただ騒いでるだけ、にぎやかにしてるだけでは、ファンは楽しんでくれない。野球できちんと魅せなければ派手なパフォーマンスや企画は何の意味もなくなる。現役時代に数々の演出にチャレンジした新庄BIGBOSSはそのことをよくわかっている。