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危ない「ふるさと納税」 加熱する返礼品競争の実態

2018/06/03
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高所得者ほど得をする

 しかし、現状ではこのようなふるさと納税の意義が達成されているとは言い難い。寄附先の選択の多くは、使いみちというよりもむしろ返礼品の内容で決められており、お世話になった自治体、応援したい地域に寄附が集まっているケースは限られる。自治体の取組も、返礼品の充実のアピールの方に力を入れていることが多い。ただし、熊本市の事例のように、災害支援の寄附としてふるさと納税を利用する取組も定着してきている。また、札幌市のように、まちづくり活動を支えている町内会・ボランティア団体・NPO団体への寄附を指定できる制度を構築し、返礼品目的ではない市民による大口の寄附を集めている事例もある。

 2017年の総務省の通知は、返礼割合の上限の目安を30%と明示したことで、自治体間の返礼品競争の過熱を抑制することが期待される。返礼品規制に加えて、税制上の特例措置も見直す必要がある。認定NPO法人等への寄附優遇税制のもとでは、寄附金額が増えると自己負担割合が増えていくのに対して、ふるさと納税制度のもとでは、寄附金額が増加しても上限に達するまでは自己負担額が2000円のままとなる。単身者の場合、年収2880万円以上のサラリーマンなら自己負担2000円で100万円の寄附も可能だ。経済学では税制上の優遇措置による税収減を租税支出(隠れた補助金)と呼ぶ。税収減による恩恵が高所得者に偏っている現状は問題だ。ふるさと納税制度による税制上の特例措置は、認定NPO法人等の寄附優遇税制に近づけていくべきだろう。

 認定NPO法人等への寄附が税制上の優遇措置を受けられる理由は、たとえ税収が減少しても、寄附が公益的な目的で使用されると考えられているからだ。その意味では、自治体には寄附金が正しく使われていることを明らかにする説明責任がある。寄附受入額、寄附の詳細な支出内訳のホームページでの公表を義務づけ、情報公開の基準を満たさない自治体への寄附は、ふるさと納税での特例措置を適用しないことも検討すべきだろう。

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