昨年秋から、このASAYANと同じ枠で(テレビ東京の日曜21時台)、スターを発掘するオーディション番組「~夢のオーディションバラエティー~Dreamer Z」が放送されている。Z世代をターゲットにしたオーディションは、「ASAYAN」のヒリヒリ感とは違う、自分との戦いを感じる。
「オンリーワン時代」の戸惑い
Z世代は、幼少の頃からデジタルに慣れ親しんでいる世代。そしてまた「オンリーワン」という言葉が身近にあった世代でもある。この言葉は、言わずもがな「世界に一つだけの花」の中にあるフレーズ。2002年夏にSMAPの14枚目のアルバム「SMAP 015/Drink! Smap!」に収録されたのち、2003年春に35枚目のシングルとして発売され大ヒットした。
「ナンバーワンにならなくてもいい」という歌詞に救われた人、ホッとした人、イラッとした人、様々な感情を日本中に吹かせたが、「オンリーワン」という言葉は、まちがいなく時代の価値観を「個性」重視に押した。そして2004年からmixiとFacebookのサービスが開始され、このSNSの発展は「世界に一つだけの花(自分の価値観)を咲かせる」ための最高のツールとなっていく。
ただ、自分らしく咲くって相当ボンヤリしていて難しい。他人と競争するのが減るぶん、増える自問自答。
SNS黎明期は「使いこなせれば才能が花開くのだろうけど、コントロールできるか自信がない」「誰かに見つけてほしいが、それはそれで恐ろしく面倒なプロセスを踏まねばならない」という自分と向き合う複雑さが濃く漂っていた。
毎日がオーディションだったAKB48
「オーディション低迷期」は2003年あたりから十数年続く。SNSの急速な進化によって、自分で発信できるようになり、メジャー離れが加速していったのが大きな理由だ。
ただ、テレビでのオーディションが減った代わりに、地下劇場やライブハウスでは、日々アイドル(のタマゴ)たちのサバイブが激化した。選抜メンバーになっても、いつ後列になるかわからない。スタート地点は始まりではなくゼロだ。AKB48をはじめ、ライブをメインにしたグループアイドルの在り方はまさに「エブリデイオーディション」システム。
AKB48の「Beginner」(2010)という曲が凄く心に残っている。常にゼロ地点を意識する歌である。