当時、リタリンはADHDや難治性うつ、ナルコレプシーの症状に悩む患者にとって欠かせない薬のひとつだった。しかし2008年1月1日以降にはリタリンを処方する医師や医療機関は登録制となり、ナルコレプシー患者に限って処方されることになった。
“合法覚せい剤”を瞬間診察で102万錠処方
「そんなリスクの大きい薬を、伊沢はほとんど診察もしないで、患者が求める量をそのまま処方していた。歌舞伎町という立地の良さから、伊沢は一人で1日300人もの患者を診るほどの繁盛ぶりで、リタラー(リタリンの依存者)からは熱烈に支持されていました。伊沢のクリニックは、診察せずに宅配便で送るなどして、1年間に約102万錠を処方していたといいます。
行政の指導も無視し続け、ついには刑事事件にまで発展。無資格のスタッフが薬を処方していたという医師法違反の罪に問われ、この件でも最高裁で有罪が確定。その後、2014年10月に医業停止の処分を受けています」(同前)
薬物処方に関する問題に加えて、女性患者をめぐるトラブルもつきものだった。
「リタリン問題で騒動になった後、2008年11月には元患者で交際していたとみられる女性に対するストーカー規制法違反と脅迫の疑いでも逮捕されています。女性の自宅で待ち伏せることもあった。電話などで復縁をしつこくせまり、心の病を抱えた女性に『お前を破滅させてやる』とまで言ったようです」(同前)
医師の倫理観ムシの「向精神薬ランキング」
こうした問題で世間の注目を集めた伊沢容疑者だが、2015年以降、再び歌舞伎町で東京クリニックを開業していた。薬物依存の問題に取り組むある女性も、伊沢容疑者についてかねてから知っていたという。
「これほど問題を起こすのに、なぜ医師としてまたクリニックを開けるのか疑問でした。伊沢のクリニックには最近でも、夜の歌舞伎町に集う女の子たちがたくさん通っていましたよ。ウェブサイトには、向不安薬ランキングトップ10なんてのも書いていて、医師として倫理的にどうなのかな、と訝しんでみていました。グーグルの口コミにも、アンチコメントには仕返しとばかりに、その患者の症状や職業などを平気で記載していますし……。
昔から問題続きで、今回は覚せい剤まで出たので、さすがに歌舞伎町からいなくなるとは思いますが、これまで伊沢を頼っていた患者たちが今後、どうなるかが心配です」
さらに「文春オンライン」取材班は、伊沢容疑者のクリニックで直接薬を処方されていた男性から話を聞くことができた。