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「じゃあやっておいて」手慣れた様子で77日間の身体拘束…14歳少女が精神科病院で味わった“極限の地獄”

『ルポ・収容所列島』より #2

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訴えもむなしく、非情な医師の答えは…

「ほかの精神科へ転院させてください。それが無理なら小児科病棟に移してください」

 主治医に却下されると、最後の希望をかけて訴えた。

「私は任意入院だと聞いています。権利があるはずなので退院して自宅に帰ります」

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 そのとき、武田さんに主治医から非情な一言が告げられた。

「ああ、いまから医療保護入院になるから、それは無理だよ」

©iStock.com

 医療保護入院は精神科特有の入院制度で、本人が拒絶しても、家族など1人の同意に加え、1人の精神保健指定医の診断があれば強制入院させられる。

 武田さんの両親は入院時に主治医から求められて、あらかじめ同意をさせられていた。

「もういいかな? じゃあやっておいて」

 主治医が手慣れた様子で言い放つと、4人の看護師が病室に入ってきた。

「看護師が手足を押さえつけ、手際よく柔道着の帯のような平たい頑丈なひもを私の体に巻き付け、ベッドの柵の下側に結んでいきました」

 両手、両足、肩の身体拘束が終わると、次に鼻の穴から、経鼻胃管のチューブが挿管された。チューブは胃カメラのときに入れるものよりも太くて固い。それが常時入れられたままになる。

「経鼻胃管をされると、24時間ずっと鼻とのどに食べ物や飲み物が詰まっているような、何ともいえない違和感があります。例えるなら、柱がのどに突き刺さっているような感覚です。とにかく、苦くて痛い、そして苦しくかゆいとしか言いようがありません」