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意識が鮮明ゆえの「極限の地獄」

 排尿は、尿道バルーンが自動的に尿を吸い出す形で行われた。拘束が外れた後も筋力が回復して自力でトイレに行けるようになるまで、2カ月半ほど付け続けた。

「経鼻胃管の痛みと違和感が強すぎて、尿道バルーンの痛みや違和感はそこまで記憶していません。ただ、恥ずかしさはとても大きかったです」

 より恥ずかしかったのは排便だ。おむつを着けさせられたうえ、排便時にはナースコールをして看護師におむつを脱がされ、お尻とベッドの間にちり取りの形をした「おまる」を入れられ、そこにしなければならなかった。

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「排便時もおなかに1枚タオルをかけてくれたぐらいしか、プライバシーへの配慮はありませんでした。3日に1回お通じがなければ浣腸され、無理やり排便させられました。恥ずかしいし情けないし、思い出したくない経験です」

 当然のことながら、摂食障害で入院した武田さんは意識も鮮明で、はっきりと意思の疎通もでき、もちろん幻覚を見たり幻聴を聞いたりすることもなかった。

「意識が完全にクリアな中でされる身体拘束や経鼻胃管、尿道バルーンの経験は、まさに極限の地獄でした」

ルポ・収容所列島: ニッポンの精神医療を問う

風間 直樹 ,井艸 恵美 ,辻 麻梨子

東洋経済新報社

2022年3月11日 発売