立浪ドラゴンズが日本一になるための教訓
続いて2016年3月25日にテレビ東京系列で放送された『所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ』で、当時の中日ドラゴンズのエース杉下茂さんがこんな証言を残しています。
「初めて使われたのが昭和29年の中日のキャンプ。ビックリしたんですよ、こんな物が出来たのか、人間が放るようなボールを。いい練習になりましたよ。当時は現役の投手も打撃練習で投げていたので、投手の疲労が溜まる一方。そこで中日ドラゴンズが、当時アメリカで開発されたピッチングマシンを改良して日本のプロ野球界で初めて導入した。(球速)130kmくらいあったんじゃないか?」
その後、全自動型のピッチングマシンが主体になるにつれ、このカタパルト式手動ピッチングマシンは役目を終え、ナゴヤ球場でホコリをかぶっていたところを「中日バッティング」の先代社長が人づてに入手したそうです。
と、ここまで長々と昔話を続けてきましたが、話を戻しましょう。この偉大なる前例が、立浪ドラゴンズが日本一になるための教訓を示していると思うんです。当時最新の技術だったピッチングマシンは、間違いなく中日ドラゴンズ日本一に貢献してくれました。その後、ご存知の通り全球団ピッチングマシンを導入していきました。施設面で中日ドラゴンズは他球団の模範となっていったわけです。
時計の針がぐいっと進んで現代。昨年の記事ですが、こんなことがありました。
<立浪竜に新兵器が導入された。中日はマシン打撃する打者が、目の前に設置されたモニターに映し出される遅延動画を確認しながら打ち込める装置を設置した。(中略)打率リーグワースト2割3分7厘からの脱却を目指す新政権に、実践とチェックを繰り返せる道具が取り入れられた。機器は「ダートフィッシュ」。遅延時間は調整可能で2、3秒に設定されている。現場の要望を球団がくみ取った。今季、2軍首脳陣がソフトバンクの2軍施設・タマスタ筑後の室内練習場に設置されているのを確認。実用へ向けて球団側へ取り付けを願い出ていたという。右、左打者用に2台用意されていて、正面からの撮影映像を見られる。希望してカメラ位置を変更すれば、頭上から体重移動や頭の位置を確かめられる。(中略)来年2月の春季沖縄キャンプは、設置場所との兼ね合いで、検討中という。>(令和3年11月13日付・中日スポーツ)
これはあくまで一例に過ぎませんが、かつて他球団がこぞってマネをしていたドラゴンズが、今では他球団をマネしなければいけなくなった。単純に施設面で後塵を拝している、ということです。
立浪ドラゴンズが日本一を掴み取るためには、ドラフトも大事、育成ももちろん大事です。ですが、それと同じくらい、球団や親会社には設備面でも積極的な「投資」をしていただきたい。他球団が羨むぐらいの。
だって中日ドラゴンズには、かつて同じことをして日本一を掴み取った「前例」があるのだから。そして、立浪和義監督はその「投資」を受けるに値する人物のはず。彼の異名は「ミスタードラゴンズ」、中日ドラゴンズの宝物なのだから。
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