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「殺されそうな練習でも、ただただありがたかった」江藤智とカープの記憶

文春野球コラム ペナントレース2022

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「殺されるのが嫌じゃなかった」

 レジェンドたちがひしめく打線の中で4番を担っていた江藤氏だが「カープの4番」ということに特にこだわりはなかったという。

「4番を任されてはいましたがあくまで4番目の打順の選手というだけ。とにかく当時は必死でしたね。前田のような天才と違い僕は努力するしかなかった。体が丈夫なことと前向きなことだけが取り柄でしたから。どんな殺されそうな練習でも、ただただありがたかった。殺されるのが嫌じゃなかったというのが良かったのかもしれませんね(笑)」

「殺されるのが嫌じゃなかった」。深すぎる言葉である。当時江藤氏は裸足でバッティング練習をし足の裏がよく剥がれていたと前田氏も述べていたが、あのアーチは命を削って作り上げたものだったのだ。

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 江藤氏は今のカープをどう見ているのだろう。現在のカープについて尋ねるとこんな答えが返ってきた。

「カープのことは広島を離れてからも気になってはいました。33番を同郷の菊池(涼介)くんが『江藤さんの番号だから着けている』と聞きましたがとても嬉しいですね。カープも今年は十分チャンスがあるチーム状態。一カープファンとして楽しみにしています。特に佐々岡さんには現役中とてもお世話になったので、佐々岡さんを是非とも胴上げしてほしいです」

 カープ打撃陣についての質問には「僕なんかが打撃のことを話す資格はないですよ」とどこまでも謙虚な姿だった江藤氏。最後まで穏やかに丁寧に答えてくれたその姿はあの時見ていた優しき大砲そのものだった。

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