共働き世帯が増加し、「イクメン」といった言葉が流行る一方、男女の役割変化になじめない人がいる。夫婦のすれ違いの果ては別居、離婚、うつ病まで――。男性を追い込む「帰宅恐怖症」とは何なのか。夫婦問題カウンセラーの小林美智子氏が解説する。(出典:文藝春秋オピニオン 2018年の論点100)

「恐妻家」がなぜ「帰宅恐怖症」に変化したか 

 以前から「恐妻家」「かかあ天下」といった言葉はありました。

「妻が怖くて、逆らえませんよ!」

「家庭では、ひたすら我慢と忍耐です!」

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「妻に怒られるけど、今日も飲んじゃってま~す!」

 ひと昔前はこんな声が聞こえてきたものです。妻にうまくリードしてもらいつつ、でもお互いに尊重し合う、どこか微笑ましい光景でした。

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 ところが、現代は「家=妻」が怖くて家に帰れない「帰宅恐怖症」という現象が起こっているのです。

 では、なぜ「恐妻家」から「帰宅恐怖症」へと変化してきたのでしょうか。

 大きな要因は社会情勢の変化です。以前は「男性は生活を支えるために稼ぐ人」「女性は家庭を守る人」という役割分担が当たり前とされていました。

 ところが現代はどうでしょうか。共働き夫婦が増えた結果、役割分担があいまいになってきました。いまや男性は稼ぐだけでなく、家事や育児に協力しなければならない時代。ところが以前のように、稼ぐ父親の姿しかみてこなかった男性は、家事や育児にどう関わっていいのかが分からない。

 一方、女性は、家事や育児をひとりで切り盛りしてきた母親の姿しかみてこなかった。だから夫に、家事や育児にどう関わってもらえばいいのか分からない。

 そこですれ違いが生じてしまうのです。これまで聞いてきた、男女の典型的な証言をご紹介しましょう。