「見栄を張って“頑張ります!”とか言っていたけど…」
そして、飛躍を期待されて迎えた高卒3年目の20年。この年を境に2人の明暗は分かれていく。遠藤が開幕から一度も先発ローテーションを外れることなく5勝を挙げた一方で、山口はどん底にいた。本来の投球フォームを見失い、故障も経験するなど未昇格に終わった。当時、取材で「遠藤投手の活躍をどのように見ていますか」と聞かれれば、「僕もすぐに追いつけるように頑張ります」と気丈に応えていたものの、内心は複雑だったと言う。「見栄を張って“頑張ります!”とか言っていたけど、心の中では中々前を向けていなかった。何してるんだろう……って」。
当時、遠藤は「翔はマウンドでも迷っているように見える」と心配し、山口も「迷いがあるから焦ってすぐに新しいことを試したくなってしまう」とうつむき気味だった。いいときも悪いときも2人は通じ合っていた。
遠藤もそのまま順調とはいかず、昨季は登板2試合のみと大半を2軍で過ごした。今季はそこから這い上がった。今春キャンプでは新人や年下の投手から優先的にチャンスを与えられる立場だったものの、結果を残し続けて開幕ローテーションを奪った。
山口は、これまで何度も言ってきた。「淳志が結果を残す度に“淳志にできるのなら俺にもできるはず”って思えるし頑張れる」。これは本心だろう。遠藤が見返そうと奮起する姿を誰よりも近くで見てきたのが山口である。一方の遠藤も必死に1軍にしがみつきながら、山口と一緒に戦えることを願っているに違いない。
次に2人でキャッチボールをする場所は、大野練習場ではなくマツダスタジアムだろうか。ケンカしたときと比べて、2人の球はどれくらい変わっているのだろう。きっといまも、「やっぱりキャッチボールっていいな」と笑い合える純粋さは、2人ともに変わっていない。
河合洋介(スポーツニッポン)
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