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はじめての取材。早川がみせた屈託のない笑顔

 2017年、早川は名門・早稲田大学に進学する。1年の春季リーグから登板機会を得た。

 神宮で投げている姿を何度も目にしたが、周りの学生とは明らかに違う。落ち着き払った姿がそこにはあった。エースに成長した3年生の頃、同郷の大先輩・小宮山悟氏が早稲田大学野球部の監督に就任した。針の穴を通すようなコントロールから「精密機械」の異名を持つ小宮山氏。そこで、力で抑えるだけではない。多くの「投球術」を学んだ。

 学生時代最後となる4年生の秋季リーグ戦。早川の活躍も光り、早稲田は優勝を果たす。「彼は私が見てきた中でも間違いなく、ナンバーワンの左ピッチャーだ」。

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 日米で活躍し多くの経験を積んできた小宮山監督が、優勝監督インタビューで語った、その言葉の意味は重いと感じた。

 早川がルーキーとして入団した2021年。私が勤めるtbc東北放送には7人のスポーツアナウンサーがいた。

 その中で、毎年春の沖縄キャンプの取材に同行できるのは1人だけ。ローテーションで回るため、希望が叶わないことも多いが、私はこの年初めて取材に行きたいと手を挙げた。早川を目の前で見たいから……とはさすがに言わなかったが運よく希望が叶い、沖縄キャンプ取材に同行できることになった。

 キャンプ取材と言えば、やはりその年のドラ1の動向は否が応でも注目が浴びる。ドラ1が動けば、カメラマンも、アナウンサーも、記者も動く。それが毎年のキャンプ取材の恒例行事だ。私も早川の一挙手一投足、目で追っていた。

 インタビュー取材でも驚かされることが多かった。

「周りに流されず、自分のペースでやっていきたい」
「周りと違う動きをしているというのは、持ち味でもあり、短所でもあるのかも知れない」
「ピッチャーは基本マウンドに一人で立たないといけないポジションだからこそ、自分で考えて行動しないといけない」
「自分のペースを崩さない人が、1軍で活躍する選手だと思う」

 これがルーキーか、と落ち着き払ったその対応に、大学1年生の頃、神宮のマウンドで投げていた時と同じ感想を持った。

 キャンプ2日目の2月2日。初めて直接言葉を交わせる機会があった。名刺を渡そうとすると、真っすぐにこちらの目を見てくれた。同郷で母校も同じ、高校時代から応援していた旨を伝えると、屈託のない笑顔を見せてくれた。

 一見ビッグマウスに見える部分があるかも知れないが、決して高飛車なわけではない。学生時代の多くの経験から裏打ちされた覚悟や自信が、細かいことには動じない、今の早川を作っているのだろう。

 今年も実況席から“クールで動じない早川”をたっぷりと見てみたい。

 応援しています、林田より。

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