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上茶谷大河と坂本裕哉が話し合った「ピンチに強くなる方法」…私が目撃したベイスターズ“春の変化”

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/04/20

 初夏を思わせる日差し、横浜公園には満開のチューリップが咲き誇り、ビールを口にすれば実に美味しそうな陽気です。球音が聞こえますが、横浜スタジアムに野球ファンの姿はありません。

 4月9日土曜日、本来でしたらドラゴンズ戦が行われる日にベイスターズは午前と午後、少人数にグループ分けをしての練習に取り組んでいました。

 スタンドには限られた人数の担当記者のみ。グラウンドに目を向ければ、午前の組でノックを受けている野手は、たったの4人。せめてノック中は外しても良いのではと思ったマスクも、新型コロナウイルス陽性者が相次ぐ状況の中では、つけたまま。ギリギリの打球を追った佐野恵太キャプテンが「ああ、苦しい!」と発した声が横浜スタジアムに響きました。

4月9日の横浜スタジアム ©吉井祥博

何度も目撃したチームが変わろうとする息吹

 練習の合間に行われた囲み取材も全てリモートに。画面を通じて伺った三浦監督の表情は一見、いつも通り穏やかに見えましたが「これからの戦いのシミュレーションはしている。先発ロ-テーションもこのままというわけにはいかない。総力戦しかない」と話した語気は、少し強めでした。

 計4試合が中止になったものの、週が明ければ戦いは再開。その時点でのベストメンバーが組まれます。私も中継の準備をしながら、いったいどんな試合になるのか思い巡り、なかなか着地点を探せません。

 それでも、心の中を占めたのは閉塞感とは違いました。春季キャンプから実戦に移る時間の中でチームが変わろうとする息吹を何度も目撃。即効性はなくても、いつもの年とは違うと思わせる根拠が、鮮やかに色付けされています。壁にぶつかった時に打ち破る方法は、選手それぞれが身に着けているはずなのです。

 8割の確率で投手有利のカウントを作る目標を掲げた投手陣。キャンプ中、伊勢大夢投手がプロ入りして初めて、1日で150球を投げ込むなどブルペンには目標達成への熱量がありました。カットボール、ツーシーム、シュートなどそれぞれ打者の内側に食い込むボール習得を目指す投手も。

 かつてベイスターズを始めセパ4球団で投手コーチを務め、今年コーチングアドバイザーに就任した名伯楽、小谷正勝さんは1月の自主トレ期間中「ベイスターズには良い素材の投手が多いのに、ストライクを取ることに苦しんでしまっているのかな」と話していました。ところがキャンプ中盤のある日、小谷さんがつぶやいた印象は「良いよ。今年の投手は」と変化。投手陣がそれぞれカウントを優位に運ぶ方法を求め続けた結果、コントロールや球種などの手段が一歩ずつ磨かれていく。手応えから出た一言ではと察しています。

春季キャンプブルペン ©吉井祥博

 ちなみに小谷さんから「良いよ」という言葉を聞くのは私にとって2度目。最初は2002年の春季キャンプ。小谷さんがスワローズの一二軍巡回投手コーチを務めていた頃「良いよ、使えるよ」と評していたのが、その年12勝を挙げセリーグ最優秀新人に輝いた石川雅規投手でした。

 余談ですが2002年当時、小谷さんは覚えていませんでしたが、話がテレビの野球中継に及んだ時「お前さんのところ、tvkか。野球中継はどんな人が見てくれているか、想像できているか」と金言をいただきました。以来、一喜一憂するファンの姿をどこかで想い浮かべながら実況に向かう様になりました。小谷さんの一言は心に沁みます。