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 それらのハードルを乗り越えて宮脇がHYBE(旧Big Hitエンターテインメント)と契約を結んだという情報が流れたのが、2021年3月。HYBEはほかでもないBTSを世界的スターに育てた韓国の音楽事務所だ。

「アメリカン・ミュージック・アワーズ(AMA)」で最高賞を受賞したBTS ©️GettyImages

 HYBEとの契約の真偽が明らかにならないまま、翌月にIZ*ONEが解散。この時点でも日本では、宮脇のHKT48復帰を期待する声があった。しかし宮脇は同年5月に同グループからの“卒業”を発表し、8月には韓国へ戻った。さらに11月には、日本の所属事務所との契約満了が伝えられる。

 この間、日本メディアは一貫して宮脇に好意的だった。HYBE移籍を機に世界進出を期待するといった評価もいくつか見られた。1人の国内アイドルから、世界への飛躍が待たれるスターに立ち位置がステップアップしたようだ。

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 日本のアイドル界ではなく、K-popの世界を目指して韓国へ渡る日本の若者たち。その存在感は近年強まる一方だ。

 韓国の百科事典サイトNamuwikiによれば、日本出身者がいるK-popグループのデビューは1990年代に2件、2000年代に1件、2011~2019年に24件。そして2020~2021年には、たった2年で22件も存在するという。

「日韓の女性アイドルの違いはビキニのグラビアをやるかやらないか」

 近年は、宮脇のように日本でのアイドル活動経験者が韓国を目指すケースも増えてきた。2018年デビューのIZ*ONEは宮脇のほかにも、48グループの矢吹奈子と本田仁美がいた。2019年には同じく48グループの高橋朱里が「Rocket Punch」のメンバーとしてデビューしている。

HKT48時代の宮脇咲良 ©時事通信社

 また48グループに在籍経験がある川村真洋(現・真洋)、濵松里緒菜も、2019~21年に韓国でデビュー。昨年放送された韓国のオーディション番組「Girls Planet 999: 少女祭典」には、さくら学院出身の岡崎百々子、X21出身の川口ゆりな、Prizmmy出身の久保玲奈などアイドル経験者も参加した。

 韓国の代表的な音楽チャート「ガオンチャート」のキム・ジヌ首席委員は韓国アイドル界を目指す日本人の増加トレンドについて、「韓国で活動すれば日本など世界市場へ進出できるが、日本で活動すれば日本以外で注目されることが難しい時代になった」と説明している(「中央日報」2021年8月31日付)。

 同紙はまたこうした動きが特に女性グループで目立つとし、ガールクラッシュ(女性が女性に憧れること)が流行っている韓国は、男性目線を意識した“女性性”を求められる日本より魅力的に映る、といった音楽事務所関係者の話も紹介した。わかりやすい例として、「日韓の女性アイドルの違いはビキニのグラビアをやるかやらないか」という対比が言われることさえある状況だ。