平昌五輪のスピードスケート女子で個人500メートル金メダル、1000メートル銀メダルを獲得していた小平奈緒(35)が12日、現役引退を表明した。今年10月に開催される全日本距離別選手権がラストレースとなる。会見で小平は自身の引退について「自分の人生を次に進めるのはいいことかな」と語った。
バンクーバー五輪以降、メダリストとして“絶対王者”の名を欲しいままにしていた小平。強さの秘密に迫った「週刊文春」の記事を再公開する。(初出:「週刊文春」 2017年12月28日 年齢・肩書き等は公開時のまま)
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「まさに“絶対女王”と言うべき存在になりました」
スポーツ紙記者が絶賛するのは、スピードスケート女子の小平奈緒だ。
得意とする500メートルでは今季のW杯は4戦全勝。この種目における連勝を23に伸ばし、さらに10日には1000メートルでも、世界新記録を樹立した。
「怒った猫になりなさい」
平昌五輪では「金メダル確実」(同前)と言われる絶対的強さの秘密とは?
「バンクーバー、ソチの五輪にも出場したベテランですが、これまではW杯では好成績を残しても、五輪本番ではふるわず、メンタルに課題があった」(同前)
転機となったのは、メダルを期待されながら五位に終わったソチ五輪後。小平は、スピードスケート大国のオランダに単身、“武者修行”に乗り込んだのだ。
「オランダでは元金メダリストのマリアンヌ・ティメルコーチに“入門”。小平にとって現役時代のティメルの闘志あふれる表情が印象的で、彼女に学びたいと思ったそうです」(同前)
ティメルコーチは2シーズンに渡って、技術面を指導したが、とりわけ劇的な進化をもたらしたのは、こんな一言だったという。
「怒った猫になりなさい」
スケート関係者が、この言葉の意味を解説する。
「小平には、スタートの姿勢で低く構えると頭が下がってしまうクセがあった。
そこで戦闘体勢で姿勢を低くしても、頭は下がらない猫をイメージしなさい、と。今ではオランダのスケートファンまで、小平を“怒れる猫(オランダ語ではBOZE KAT)”のニックネームで呼んでいます」
武者修行の成果は、それだけではない。
「異国の地で通訳もスタッフもいない生活をするわけですから、どんなトラブルも自分で処理しないといけない。結果、課題のメンタルが鍛えられて、試合でも動じなくなった」(同前)