死亡率の高さから“がんの王様”と呼ばれる膵臓がん。最近は増加傾向で、2015年の予測値だと罹患数は約3万9000人。死亡数は約3万3000人となり、肝臓がんを抜いて4位に上昇した。

 東海大学医学部消化器外科の中郡聡夫教授が語る。

「他のがんと同じように、いくつかの遺伝子異常が重なって発生する可能性が高いと言われていますが、詳細なメカニズムはわかっていません。最近増えているのは、お年寄りに多い病気なので、高齢化社会が主な理由だと思われます」

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 かかりやすい条件は、いくつか判明している。

「糖尿病の方はリスクが2~3倍、アルコールが原因などで起こる慢性膵炎の方は7~10倍と言われています。それから喫煙者はリスクが2倍、親や兄弟に発症者がいる方もリスクは数倍です。特殊なケースは膵管内乳頭粘液性腫瘍。この腫瘍自体は大半は良性ですが、これがあると膵臓がんはハイリスクとなります」

 早期には症状は出ない。

「症状が出たときには、すでに8割は手術ができない状態です。進行すると、腹痛、背中の痛み、食欲不振、胃がもたれる、黄疸、褐色尿、発熱などがあります。これらの症状が出て、胃カメラでも異常がなかったら、膵臓か胆道を疑ったほうがいいでしょう」
 
 

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 検診方法は血液検査による腫瘍マーカーが一般的だが、早期では見つけづらいのが実情だ。

「膵臓がんの早期発見は本当に難しくて、年に1回の検診だとなかなか見つかりません。膵臓がんを見つけるには年2回は超音波検査を行い、そこで少しでも異常が見られたらCTか超音波内視鏡をすぐに行う。実際、11月の検診では異常なしだった患者さんで、翌年6月に来院されたときには4~5センチの大きな膵臓がんで切除不能だったという方もおられます。進行がとても早いがんなので、半年間隔であればぎりぎり対処はできると思います。糖尿病や慢性膵炎などハイリスクの方は、超音波だけではなくてCT、MRI、超音波内視鏡も積極的に行いましょう」

 5年生存率は膵臓がん全体で2~3割と、深刻さで群を抜いている。

「昔より少しは改善していますが、最後の難攻不落のがんですね。治療法は手術、抗がん剤、放射線、最近は重粒子線治療もよく行われます。手術だと器具の進歩などで以前よりも安全に行えるようになりましたし、抗がん剤も特に新しい薬がよく効きます。2014年12月にゲムシタビンとナブパクリタキセルの二剤併用療法が保険適用になりましたが、これは日本人なら約5割の方で腫瘍が30%以上縮小します。腫瘍が縮めば長生きできますので、再発された方などによく使います」

 すべてのがんは早期発見で生存率が大きく変わる。いずれかの発症リスクに当てはまるなら定期的な検査を心がけよう。