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広島・安部友裕をブレイクに導いた「言葉の力」

文春野球コラム ウィンターリーグ2017

2017/12/13
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ようやく1軍に定着した安部

 2016年は、ついに安部が1軍に定着する年になった。でもシーズン開始時はそこまで期待されてなかった。新助っ人としてドラゴンズにいたルナを獲得していて、サードを守る予定だった。チームの穴はサードだと思われていた。ところが、シーズン早々にルナが怪我で離脱することになり、安部にサードスタメンのチャンスがまわってきた。ここがポイントだった。安部はバットで貢献するようになったのだ。お立ち台にあがる機会もでてきた。

 そしてインタビューでは「覇気を出した」とアピールしていた。あまり聞き慣れない覇気という言葉を、少しぎこちなく使う安部のインタビューを聞いて、自分は「ファンへのアピールに必死なんだ」とか思っていた。でも、それはまったくの間違いだった。安っぽく受け取って安部に悪かったと思う。今思えば、安部はこの言葉に頼って自分を変える、と強く覚悟していた。安部が活躍するたびに「覇気」と言うのを聞いてそんな感じがしてきた。だんだんファンも覇気という言葉に慣れてきた。

ついにチームに欠かせない選手となった安部

 今年の安部は、プロ入り初めて規定打席に到達して打率.310の成績を残した。サードでの出場だけでなく、チーム状態にあわせてファーストもセカンドも守った。シーズンは長い。今や内野ならどこでも守れて、外野で出たこともある安部は重要だ。ポジション争いに敗れながら、いろんな守備位置をやってきたことが存在価値を高めることになった。ついにチームに欠かせない選手となったのだ。覇気という言葉が安部をここまで導いたと思う。

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 9月5日のタイガース戦は、今年の安部のハイライトになった。2位タイガースに追い上げられていたときの直接対決だった。1点を追いかける9回裏にクローザーのドリスから逆転サヨナラツーランを放ったのだ。安部は興奮したままスピードをあまり緩めることなくダイヤモンドを回った。マジックを再点灯させる重要なホームランになった。このゲームが今年のペナント争いで一番重要だった、というカープファンも多いと思う。

 来年は西川龍馬とサードのスタメン争いになりそうだ。今度は年下からの挑戦を受ける形だ。プロの世界の競争は厳しい。西川は先の若手中心の侍ジャパンで活躍した強敵だ。でも、きっと安部は大丈夫だ。守備のユーティリティ性があるのは大きい。そして安部は覇気があるからね。

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