2018年カープのキャッチフレーズ

 11月に開催されたファン感謝デーの中で、来年のカープのキャッチフレーズが発表された。「℃℃℃(ドドドォー!!!)」という、かなり変わったものだった。意味はカープ公式ページに説明があって「努力」「泥臭さ」「怒涛」「度胸」「同心」「同郷」「胴上げ」などの言葉と、熱さ(=温度)の℃とカープのCをかけている。球団の人にとってキャッチフレーズは、1年間の興行のさまざまなアイデアの元にするからマーケティングとして重要なんだろう、と思う。選手紹介の映像で使うし、さまざまなグッズで利用される。ファンはそれを楽しむ。ただチームのキャッチフレーズが選手の戦いぶりにすごく影響するか、というとあまりそんな感じはしない。

 言葉で変わった選手で思い浮かぶのは安部友裕だ。2年くらい前から安部は「覇気」という言葉を繰り返しインタビューで使って、いわば自分のキャッチフレーズにした。そしてそこから変わっていった。ここ2年の安部を思い返すと、言葉が選手をここまで変えることがあるのか、と驚いてしまう。

「覇気」という言葉とともに10年目でブレイクを果たした安部 ©文藝春秋

1軍定着に時間のかかった安部

 安部は1989年生まれで、チームの中心の丸佳浩、菊池涼介、田中広輔と同学年だ。安部は高卒でドラフトされて入団したから、丸と並んでこの世代ではチーム在籍が一番長い。安部は高校生ドラフト1巡目で、3巡目の丸より期待が高かった。でもチーム内での二人の位置づけはすぐ逆転した。丸は順調に成長して、4年目の2011年には1軍に定着したが、安部は時間がかかった。安部が1軍に定着したといえるのは9年目の2016年だ。

ADVERTISEMENT

 安部に関する記事を読むと、1軍に定着できなかったころはメンタル面でつらかったようだ。2013年には、同世代で遅れて入団した2年目の菊池がセカンドに定着した。安部はセカンドを守っていたが、ポジション争いに負けてしまった。この年、丸と菊池はチームの中心で、カープを初めてのCS出場まで引っ張っていた。

 2014年には、やはり同世代の田中が、ルーキーでシーズン後半にはショートに定着した。安部はセカンドのあとショートで出ていたのだが、ここでもポジション争いに負けることになった。2014年の安部の1軍での出場はわずか3ゲーム。プロだから競争は当然だが、これはつらい状況だっただろう。入団したときは同世代で一番期待が高かったのに、つぎつぎ追い越されることになったのだ。どうやら、そのころ東出輝裕コーチに「覇気を出せ」と言われたようだ。2015年も1軍定着とはならず、1軍で出場するときはサードを守るようになっていた。