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加計学園問題のキーマン、下村博文を追及せよ

『悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』の森功が下村博文に逃げられた瞬間

2017/12/19
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下村夫人は加計学園グループの教育審議委員

 先の特別国会では、会計検査院による森友学園の国有地8億円値引きへのダメ出しを受け、改めて野党が安倍昭恵の関与を追及した。彼女は加計学園理事長、加計孝太郎の飲み仲間である一方、下村夫人の今日子ともすこぶる仲がいい。今日子は加計学園グループの教育審議委員として、昭恵とともに学園の事業に肩入れし、学校行事にも参加して、その模様を自らのフェイスブックにアップしてきた。

 当の今日子は、このまま加計との親密な交友の証拠を残してはまずいと考えたのかもしれない。夫に裏献金疑惑が浮上すると、フェイスブックから加計学園関連の投稿を削除した。が、その甲斐もなく、ここへ来てネット上に加計との関係写真が乱れ飛んでいる。

©橋本篤/文藝春秋

 森友・加計問題で説明責任を果たす――。

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 今夏の支持率急降下を受け、安倍内閣はそう強調してきた。が、もはや誰もそれを期待していない。しょせんその場しのぎの山師の玄関のようなものだ。つまるところ安倍政権は、説明すればするほど、わが身が危うくなるので、嵐が過ぎ去るのを待つしかない。森友・加計の両学校法人に対する特別扱い疑惑が明るみに出てからこの間、首相やその側近、関係官庁の問題への向き合い方を振り返ると、そう感じる。

安倍昭恵夫人©JMPA

 首相周辺は新たな事実が浮かび上がるたび、いったんはそれを否定してきた。が、そのほとんどが嘘で、やがて事実がはっきりして修正を余儀なくされた。会計検査院の審査や音声データにより誤魔化しきれなくなった森友学園の国有地値切り交渉然り、官房長官が怪文書とまで言った文科省の文書も然り。まるで“もみ消し工作”に失敗した挙句、認めざるを得なくなっているかのようだ。

 しかもそれでいて安倍政権は、この期に及んで論点をずらして誤りを認めようとはせず、責任の所在を明らかにしない。

「この先、省庁の文書管理を徹底する」「今後、国有地払い下げのチェック体制を整える」といった塩梅で、実際に何が起きたのか、その事実関係の検証すらしようとしない。

 もっとも本来、この手の疑惑の解明は、さほど難しくはない。国会で野党が言うように、加計孝太郎や安倍昭恵をはじめ、関係省庁の当事者がそれぞれ事実を明らかにすればいい。そこで忘れてならないのが、下村博文だ。

 加計にとって獣医学部新設は、第1次安倍政権時代から10年にわたる悲願である。かつて果たせなかった友の願いをどのようにして叶えたのか。それを取材していくと、今度の特別待遇がどのようにしてできあがっていったのか、少しずつ見えてきた。

 安倍の盟友、加計にとって獣医学部新設への道が開けた最大の転機は2015年だ。それまでの構造改革特区制度から第2次安倍政権で始めた国家戦略特区制度を使って、押し切ろうとした。その知恵を誰が授けたのか。この年の4月2日、今治市とともに加計学園が首相官邸に出向き、その2か月後に特区申請をやり直している。むろんこの日、首相官邸には下村もいた。

(文中敬称略)

悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞

森 功(著)

文藝春秋
2017年12月15日 発売

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