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ドア開閉の流儀「お客様の流れが途切れる一瞬が見えてくる」

 もちろんもうひとつ大きな仕事であるドアの開閉も簡単ではない。見習い車掌ではドアを閉めるタイミングを掴めずに、遅延を招くこともあるという。

「経験を積めば、どんなにご利用の多い駅でもお客様の流れが途切れる一瞬が見えてくるようになるんです。理屈じゃないのでなんとも言えないんですが」

 線区の特徴を踏まえた車内放送に経験がモノを言うドア開閉。車掌のお仕事、意外と“職人”なのだ。そしてそれを支えているのが、見習い時代に作った1冊のノート。

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「自分が担当する線区すべての駅について、1線区1冊・1駅1ページでノートを作るんです。駅の配線図から信号の位置、エレベーターなど駅の構造にはじまり、到着前の車内放送をするタイミングはどこなのか、車窓もチェックしてノートにまとめます。私は見習い時代に網干(あぼし)から長浜まですべての駅でノートを作りました。最初はノートを見ながらですが、今ではほぼすべて頭に入っていますね」

 

 まさしくプロフェッショナルである。車窓を把握することは、車内巡回時の観光客との会話にも大いに役立つという。

「今年の春から大阪~金沢間の特急『サンダーバード』にも乗るようになったのですが、そこでは車内改札でお客様と接する機会も多く、その中で『あの山が白山? 標高ってどれくらい?』などと質問されることもある。また、どのあたりを走っているのか把握するためにも車窓のチェックは欠かせません。が、特急は経験が少なく、まだノートを見ながらなんですが(笑)」

 そんな藤吉さんだが、この秋からは見習い車掌を教育する“指導車掌”に就任。今後は後進の育成にも力を注いでいくという。