――それでどうしましたか。
僕ができるのは、カタログやチラシ、パンフレットを作ること。名簿からお客さまにDMを送ることができる。芸能の営業がどういう仕組みかわからないから、狩人に「仕事はどういうところから来るの?」と聞いたら、お祭りやホテルのディナーショー、企業のイベントだという。ああそういうことか。じゃあと、営業の出演料をはっきり明記したDMを企業・ホテル・商工会議所など約5千か所に出したんですね。
ステージ1本80万円。ステージ2本160万円にバツをつけて、ディスカウント価格100万円。どうやら芸能界では営業価格はマル秘で、その値段も交渉次第。代理店が間に入りますから、お客さまも気安く依頼ができない。ですから、こういう試みはありえなかった。ところが、依頼が殺到したんです。狩人は年2本だったのが、なんとその年100本以上の仕事が決まりました。
月給制がタレントに大好評…芸能界で話題に
――画期的ですね。
これは素人だからできる発想です。それまでの狩人の営業で取り引きのあった会社からはクレームが来ましたけどね。けれど僕は、タレントに依頼してくれるお客さまや、イベントに足を運んでくれるお客さまがよろこんでくれればいいという考えが根底にありました。結果的にこのやり方は、タレントとお客さまの双方が満足するものでした。で、僕は僕で欲が湧いて、よし、このやり方で他の歌手でも仕事をしようと思い、誰かをスカウトしようと思い立った。
あるときNHKホールに行くと、『雨』を大ヒットさせた演歌歌手の三善英史さんがポツンと寂しげに座っているのを見かけた。挨拶すると、所属事務所はないという。もともと僕は三善さんのファンということもあったので、月給を提示することでうちに来てもらいました。それを機に、三善さんがいるのに「あずさ2号」じゃあまずいだろうと、社名を「夢グループ」に変更しました。すると、芸能界って狭い世界なんですね、うちに来ると給料を保証してくれるという噂がぐるぐる回って、いろんなタレントさんから「社長、私も所属で入れてよ。給料いくらもらえるの」と売り込みがたくさん来ました。
――当時、芸能界はその話で持ち切りでしたね。千昌夫さん、チェリッシュさんや黒沢年雄さん、松方弘樹さんも、立て続けに「夢グループ」に所属されました。
その他にもフィンガー5の晃さん、韓国ドラマの主題歌を歌ったZEROさんなどが所属になりました。中でも晃さんは辞めたり入ったりの動きが激しいですけど(笑)。いろんなタレントとめぐり会えて、一緒に仕事をするようになりました。