森山家の『ファミリーヒストリー』とキャスティングの秘密
森山 数年前、私の家族の歴史をNHKの『ファミリーヒストリー』で紹介していただいたので、「番組をご覧になってお声がけしてくださったのですか?」と聞いたら、「いえ、知りませんでした。なんとなくピンときて」だと(笑)。私のバックグラウンドを念頭に置いて、ということではまったくなかったようで、まさにご縁ですよね。
ジャズミュージシャンの家庭で育ったこともあり、「オン・ザ・サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート」も当然のように家で聴いていました。父もひなたの道を明るく進んでいくような、ほがらかな性格の人だったんです。怒られたことは一度もなくて、いつも「I love you」と言ってくれました。
――「英語」を縦糸に3世代の物語を紡いだ『カムカムエヴリバディ』に対し、森山家はジャズトランペッターの父・久さん、シンガーだった母・陽子さん、息子で歌手の森山直太朗さん、そしていとこのムッシュかまやつさんと、「音楽」でもファミリーがつながっています。
森山 「英語」と「音楽」に通じる家族の話で言いますと、優しい父でしたが、発音にだけは厳しかったですね。英語の歌をちょっと鼻歌で8小節も歌ったら、「良子ちゃん、ちょっといらっしゃい」と、RとL、ZとSの違い、発音の全てを2、3時間、特訓させられました。やっと終わっても、次の8小節を歌うとそれが繰り返されました。
小さいとき、9歳上のムッシュは2軒隣に住んでいて、仕事を始めてから仲良しになりました。ムッシュのパパ(※)はジャズの学校をやっていたから、そこでもいろんな曲を聴いて自然に覚えました。
(※)ティーブ・釜萢。日本ジャズ学校創立者で、ムッシュかまやつが所属していた「ザ・スパイダース」の名付け親。
――2017年3月に亡くなられる直前まで、ムッシュかまやつさんとは森山さんのお家で同居して、ご家族で看護されていたそうですね。
森山 そうでした。「毎日生存確認するのも大変だから、うちに来ない?」「いいのかよ! おもしろそうだな」で決まりです。
最後は2人でずっと音楽の話をしました。私が仕事で出ているときはビートルズやローリング・ストーンズのビデオを置いておくんです。で、帰ってくると「ビートルズってすげえタイトなのな!」とか言ってね。いつも音楽の話をして、本当に楽しかったです。
――ご家族の仲の良さが伝わってきます。
森山 私にとって「家族」は礎。「どこにいても、なにをしていてもいいから幸せになりなさい」という父からの言葉は、人生の舵取りのような言葉ですね。
――5月8日には、16回連続という「母に感謝のコンサート」に出演されます。母の娘として、また子どもたちの母としてもどんなコンサートを披露されるのか楽しみです。
森山 会場は大阪城ホールなんです。『カムカム』もNHK大阪の制作だったものですから、いろいろとそちらも趣向を凝らそうかと考えています。ただ走るには大阪城は広すぎるかな~(笑)。
写真=鈴木七絵/文藝春秋
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