『夫を捨てたい。』(祥伝社)は、漫画家・いくたはなさんの実体験に基づくコミックエッセイ。好きで結婚したはずなのに、どんどん夫が嫌いになっていく――そんな本音を吐露した内容がSNSを中心に話題に。600万PV超の大反響を呼び、2020年に書籍化された。
いくたさんは社会人3年目のときに妊娠をきっかけに結婚し、産休に入った。無事に長男が誕生し、はたから見れば幸せそのものの3人家族。しかし、内心では「夫を捨てたい」と思っている自分がいたという。
「本作が生まれるきっかけとなったのは、いくたさんがInstagramで公開されていた旦那さんとのエピソードでした。夫婦の仲の問題は普遍的なテーマですし、悩んでいる方も多いはず。いくたさんの体験談から得られるヒントがあるのではないかと思い、書籍化のお声がけをしました」(担当編集者の宮崎綾さん)
育休中、ワンオペ育児に疲れ果て…
長男出産後の育休中、いくたさんは慣れないワンオペ育児に疲れ果て、社会から取り残されたような孤独感にさいなまれていた。
その頃の夫はというと、勤務先の最若手という立場から飲み会の誘いを断れず、深夜まで家を空ける日も少なくない。当然、家事や育児は妻に任せきりになる。いくたさんが会社に復帰するときも保育園探しを丸投げし、あれこれ文句を言うだけだった。
そもそも「経済的に厳しいから(共働きで)支えてほしい」と言ったのは夫であり、実際のところ、いくたさんのほうが収入は高かった。にもかかわらず、夫は「働いてほしい」と言うばかりで、働く妻をサポートしてはくれない。いくたさんの心には、やるせない気持ちが積もり積もっていく。
「急に熱を出した息子さんを、会社を早退して保育園に迎えに行く場面が読んでいてつらかったですね。保育園に向かって走りながら、『部署のみなさん、本当にすみません』と泣いているんです。