何を言われてもひたすらアップし続けた
──それまで育児ネタを読んできたフォロワーからは、どんな反響がありましたか?
魚田 アメンバー限定で記事を公開したのですが、「なんでお母さんに言わなかったんですか?」とか、「どうかお母さんと話し合ってほしい」というコメントをすごくたくさんいただいてしまって……。
私を心配してくださってのコメントだということはわかるんですが、過去の自分が責められたような気がして、すごく落ち込みました。幼い私にとって母は絶対的な存在だったので、母に嫌われるかもしれないようなことは絶対に言えなかったんですよね。
しばらくの間は、限定記事での公開はやめ、いままで通りの全体公開記事で育児絵日記を描いていたところ、「NAPBIZブログ」さんからお話をいただきました。そこで、一度心の整理をするつもりで「ツカサのことをすべて描こう」と思い、あらためて整理して発表し始めたんです。「描くからには最後まで描ききろう」と覚悟を決め、何を言われてもひたすらアップし続けました。
描き直したりしていくうちに、より心の整理ができた気がする
──描いているうちにフラッシュバックに襲われたり、苦しい気持ちになったりすることはありませんでしたか? 完全なフィクションとして発表することもできたと思うのですが、あえて「実話」として公表することに抵抗はなかったのでしょうか。
魚田 育児ブログの時も自分の体験しか描いてこなかったので、それしかできないと思ってましたね。フィクションで描こうなんて、考えてもみませんでした。
それに、NAPBIZで発表する時点で、もう自分のなかではかなり気持ちの整理ができていたので、過去を思い出してつらくなったり、フラッシュバックに悩んだりということもなく、むしろ「作品」として完成させよう、という意気込みのほうが大きかったと思います。
さらにそこから、雑誌連載のお話をいただき、今回書籍になった『母の再婚相手を殺したかった』にまとめていただいたのですが、ここまでくると自分のなかで完全に「作品」としてとらえることができたので、「よし、いいマンガをつくるぞ!」という感じでしたね。ブログはあくまでその時その時のエピソードを描いているだけなので、雑誌の連載や書籍化にあたって、「作品」としてストーリーを考えたり、描き直したりしていくうちに、より心の整理ができた気がします。
──ご主人やお母さんに気づかれるかも、という不安や恐怖はありませんでしたか?
魚田 それはないですね。自宅に単行本がたくさんあるので、もしかしたら夫は気づいているかもしれませんが、とくに何も言いませんし、そもそも、そんなことで怒るような人ではないという安心感と信頼感があるので、大丈夫です。