母の再婚相手から、10年間に渡り性的虐待を受けてきた経験を描いたコミックエッセイ『母の再婚相手を殺したかった』。作者の魚田コットンさんは、性的虐待を受けたことで、身体はもちろん、心にも大きな傷を負ったといいます。親になった魚田さんは、いま性暴力についてどのように思っているのでしょうか。発信を続ける理由についてもお聞きしました。(全2回の2回目。前編を読む)
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「たいしたことない」と思い込んで誰にも言えなかった
──継父であるツカサから性的虐待を受けた当時、どうやって心身のバランスを保っていたのですか?
魚田コットン(以下、魚田) マンガやネット記事などで、義理の親など身近な人から性的虐待を受けている人の知識を得て、「私はレイプまではされていないから、まだマシ」「ツカサにされたことなんて、ほかの人に比べたら痴漢に遭遇したようなもの」と自分に言い聞かせながら過ごしていました。「自分はまだマシ」「たいしたことではない」と思うことで、なんとか自分を保っていたように思います。
第4話で、夜中に不審者が部屋に侵入してきた話を描きました。学校の掲示板に貼り出されていた不審者情報で、男の服装や背格好の特徴を見て「この人だ!」と気づいたんですけど、それも「たいしたことない」と思い込んで誰にも言えませんでした。
子どもは大人が思っている以上に自分を隠すのが上手
不審者が去ったあと、すぐ母に話したんですけど、「今は夜中で何もできないから、とりあえず寝なさい」と言われたんですよ。翌朝改めて母に「警察に連絡しないの?」と聞いたら、「警察なんか呼んだって、何の役にも立たない。そもそもそんな人が本当にいたの? 夢でも見たか、幽霊だったのでは」と、何も行動してもらえず、挙げ句に「もう忘れなさい」と言われて終わりました。
このことで私は、「警察に何か言っても何もしてくれない」「誰も私の言うことなんか聞いてくれない」と思うようになりました。
──魚田さんにはお姉さんがいらっしゃいますよね。継父から性的虐待を受けていることを、お姉さんに相談することはできなかったのでしょうか。
魚田 私の家では家族間で悩みを相談したり、話し合いをしたりする習慣がなかったんですよ。家族とはただ一緒に暮らす存在だとしか思っていなかったので、「相談」というのは思いつきませんでした。