「2015年に倒産したインドネシアにあるユニクロの下請け工場の負債を、ユニクロに肩代わりしてほしい」

 国際NGOであるクリーン・クローズ・キャンペーン(The Clean Clothes Campaign)東アジア支部(CCCEA)の担当者が、厚労省で記者会見を開いたのは12月12日のこと。一体どれほど記者が集まるのだろうか、と思いながら記者会見場に足を運んだ。

CCCEAの記者会見 撮影/筆者

1人当たりの労働債権は約15.4万円

 CCCは、日本では馴染みの薄いNGOではあるが、国際アパレル業界では広く知られた人権NGOである。日本では、NGO「横浜アクションリサーチ」がCCCEAの運営団体の一つとして活動している。

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 香港をベースに活動するCCCEAの蘇湘さんの主張は、以下のようになる。

 ユニクロの下請け工場であるジャバ・ガーミンド(Jaba Garmindo)には約4000人の労働者がおり、2014年10月に大手委託先であるユニクロが発注を中止して以来、工場経営は傾き始め、2015年4月に倒産する。

 インドネシアの労働省は、労働者に対する未払い賃金や離職手当て等を含めた労働債権が1000万ドル(約13億円)あると認定している。会社の資産などを売却することで、450万ドルが労働者に支払われた。しかし、残りの債権は約550万ドルに上る。4000人の従業員数で単純に頭割りすると、1人当たり1375ドル(約15.4万円)。1カ月の最低賃金が2万円台にとどまるインドネシアにおいて、労働者にとってどれだけ多大な金額かは想像に難くない。

 同工場の労働者を代表するCCCEAは、ユニクロに対し、生産の発注の割合に応じて、労働債権を負担してほしい、と言うのだ。

 ユニクロは同工場への発注の割合を明らかにしていないが、仮に発注全体に占める割合が5割なら、残りの労働債権の半分を負担してほしいという主張だ。

 CCCEAはユニクロに対して、今年2月から断続的に、直接の面談やメールでのやり取りを通してその要求を伝えてきたが、金銭的な負担をするという回答が引き出せなかった。そのため、蘇さんが来日してメディアに訴えることになった。同時に、ユニクロの親会社であるファーストリテイリングのサステナビリティ部・新田幸弘執行役員に面談を申し込んだが、断られている。

 会見に出席したのは、新聞やネットメディアなど約10社。最後の質疑応答の際、ある記者の「あなたたちはユニクロを提訴するつもりがあるのか」、「あなたたちは、国際的には発注した企業側にそうした賠償責任を求めるのが慣例となりつつあるというが、それは全体の労働争議の何割程度に当てはまるのか」という棘のある質問に、ある種のいら立ちが含まれていることを感じたのは、おそらく私だけではなかっただろう。