ソビエト連邦は1991(平成3)年12月25日、ゴルバチョフ大統領が辞任を表明して、解体にいたった。声優の上坂すみれが生まれたのはその6日前、12月19日で、きょうが26歳の誕生日である。
ソ連好きを公言している上坂は、偶然ながらソ連解体と同時期に生まれたこともあり、縁を感じているようだ。最近のインタビューでも「私はもしかしたら、いかにしてソ連が滅んでいったのか、その記憶を語り部のように後世に伝えていく役割を担わされた人間なんじゃないかって」思うときがあると、冗談めかして語っていた(「文春オンライン」2017年11月3日)。今年3月には、サハリンへ日本文化を紹介するイベントに出演するため初訪問している。
声優として本格的に活動するようになったのは、上智大学在学中の2012年。同年放送のテレビアニメ『中二病でも恋がしたい!』ではメインキャラクターの凸守早苗を演じた。アーティストとしては翌13年、ファーストシングル「七つの海よりキミの海」をリリース、そのジャケットデザインはロシア構成主義を意識したものだった。来年の1月31日には9枚目のシングル「POP TEAM EPIC」がリリースされる。その表題曲は、上坂の出演する同月から放送・配信が始まるアニメ『ポプテピピック』のオープニングテーマだ。このほか年明けには『中二病でも恋がしたい!』の劇場版の公開も控えている。
上坂がソ連に興味を持つようになったのは、高校時代、YouTubeでたまたまソ連国歌を聴き、そこから関連する動画を漁るように観たのがきっかけだったとか。前後して、中学時代にはミリタリーやロリータファッションにも関心が向かっていた。当時アイデンティティ危機にあったという彼女にとって、これらは「趣味というか『よりどころ』っていうのが正しいですかね」とのちに語っている(「エキレビ!」2013年7月17日)。声優デビュー後は、自分の好きなものを前面に押し出して活動しているが、それについて当の彼女は、次のように客観的に見ていたりもする。
「冷静に考えると、常にマイナーだなって思い続けてるんです。ほんとに。冷静に。私の中に色んな人がいるんですけれども、いろんな人の織りなす会議の中で『この趣味はやはりマイナーだ』という結論が採択されるので」(「エキレビ!」2013年7月17日)
かつては裏方的存在であった声優だが、いまやアニメだけでなく、音楽に舞台にと活躍の場を広げ、若い世代には憧れの職業の一つになっている。そのなかにあって、趣味の世界でも注目される上坂の存在はきわめてユニークだ。