それから、ダーチャは「建てる」ことそれ自体が楽しみにもなります。つまり大工さんに作ってもらうのではなくて、ログハウスのキットを買って自分で作るのです。みんながみんなではないですが、週末ごとに少しずつ自分のダーチャを完成させていくことに生きがいを見出しているロシア人は少なくありません。
プーチンも持っている“別荘人脈〞とは
ロシアでは定年退職した後、都会の家を引き払ってダーチャに永住する人もいます。しかし、多くの人は週末だけダーチャに滞在するわけですから、ウィークデイは全く無人化してしまい、空き巣に入られる危険があります。
そこでダーチャは大抵、協同組合という形式を取り、所有者がお金を出し合って塀を作ったり、管理人を雇ってあります。まぁ管理人も必ずしも信用できない風情であったりするのですが、ロシアの治安状況を考えるといた方がいいでしょう。
いわば森のあちこちに、ゲーテッド・タウンができるのです。マンションの自治会みたいなもので、こうなると週末を過ごす別荘地に、もう一つの人間関係が生まれてきます。
平日は仕事も地位もさまざまだけれども、「週末だけのご近所さん」として長く付き合っていくのです。
うちの奥さんの実家もダーチャを持っていますが、お向かいさんは元KGBの大佐、お隣さんは郵便局長、裏は英語の先生と顔ぶれはなかなか多彩です。
彼らとは一つのコミュニティができていて、週末になると子供たちを一緒に遊ばせたり、夜は一緒に食事をしたり、酒を飲んだりしながら語り合うのです。年末年始もだいたいダーチャで過ごすので、正月を一緒に祝う仲でもあります。ある意味、家の近所の人たちよりも、親密な人間関係ができています。
これはプーチンとて例外でなく、KGBを退職した後、サンクトペテルブルクの郊外に「オーゼラ」という別荘組合を作ったといわれています。
この別荘組合のメンバーには、のちにロシア国鉄(RZhD)総裁となるウラジミール・ヤクーニン、TV局「第一チャンネル」や大手紙『イズヴェスチヤ』などを傘下に収めることになるユーリー・コヴァリチューク、教育・科学大臣となるアンドレイ・フルセンコなど、初期プーチン政権を支えた重要人物が含まれていました。
プーチンの人脈というと、KGB時代やサンクトペテルブルク副市長時代の同僚たちが有名ですが、ここにもう一つ、ダーチャ人脈があったことは面白いと思います。
プーチンもまたロシア人、ということでしょう。