土田さんも有吉さんも、テレビに出ているときには上島さんのことを悪く言ったり、冷たく突き放した物言いをすることもあるが、実際には深い尊敬の気持ちがあるのだということが言葉の端々から伝わってきた。
「ちょっと一杯だけ、飲んでいきませんか?」
実は、私も今から10年ほど前に、一度だけ「竜兵会」にお邪魔して、上島さんと飲みの席でご一緒させていただいたことがある。雑誌の企画で、今は閉店してしまった東高円寺の居酒屋・野武士で行われる「竜兵会」の飲み会の様子を取材したときのことだ。その場にいたのは上島さん、肥後克広さん、デンジャラスの安田和博さんという顔ぶれだった。
彼らが酒を飲みながら座談会形式で話をして、取材が一通り終わった後、ライターの私が上島さんに声をかけられた。
「ちょっと一杯だけ、飲んでいきませんか?」
あの人懐っこい笑顔でそう言われて、断れる人がいるだろうか。「それでは一杯だけ」と、お言葉に甘えてお付き合いさせていただいた。酒の席でも上島さんはテレビで見るイメージとほとんど変わらず、器が大きく温かみのある人だった。どこか哀愁を漂わせているようなところもあり、大人の男性としての魅力にあふれていた。
竜兵会の後輩芸人たちは、上島さんのことを「太陽様」と呼んでいたという。言い得て妙とはこのことだ。太陽はただそこにあればいい。それだけで植物は育ち、動物は生き生きと活動して、大地は豊かになる。
上島さんというお笑い界の太陽を奪われた私たちの喪失感は、そう簡単には埋まらないだろう。上島さんが師と仰いでいた志村けんさんの突然の死から2年あまり、偉大なコメディアンがまた1人、この世を去った。
心よりご冥福をお祈りします。