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後輩芸人に愛された“情けなさ”

 もともとは、上島さんが同じ事務所の後輩芸人たちと番組で共演した際に、彼らを誘って飲みに行ったことが始まりだった。

 ダチョウ倶楽部以外の若手芸人は当時、あまりテレビの仕事もないような状態だった。上島さんは彼らに酒をごちそうして、先輩らしいところを見せようとしていた。後輩芸人たちもはじめは緊張した様子で上島さんの話を聞いていた。

 ところが、何回も集まっているうちに、少しずつ関係性が変わっていった。上島さんはメンバーで唯一の売れっ子であるはずなのに、場をうまく仕切ることもできないし、面白い話をすることもできない。むしろ、酔いが進むと後輩である土田晃之さんをつかまえて、「俺はこれからどうしていけばいいんだ!?」と泣き崩れることもあった。

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 そのように上島さんの情けない一面が見えてくると、後輩芸人たちは徐々に上島さんの変なところを遠慮なく指摘するようになっていった。時には厳しいツッコミをいれたりすることもあった。そうやって後輩に生意気な態度をとられても、上島さんは気にせずにどっしり構えていた。

「竜兵会」のメンバーに囲まれて

 芸人同士の集まりはほかにもあるが、竜兵会に特徴的なのは、表向きには厳しい上下関係が見えないということだ。後輩たちは、予定があれば平気で上島さんの誘いを断ることもあるという。「上の人の命令は絶対」というような体育会系の組織ではない。

弱みを見せられる“器の大きさ”

 でも、竜兵会には独自の団結力があり、いざというときにはまとまって力を発揮することができる。有吉さん、土田さんをはじめ、劇団ひとりさんなど、竜兵会からは売れっ子芸人が数多く輩出されている。

 上島さんは酔っぱらうと気の利いたことも言えないし、土田さんや有吉さんに比べると器用にしゃべれるわけでもない。ただ、そんな彼らの愛のあるイジりを全身で受け止めて、いつでも堂々としているのが上島さんの偉大なところだ。自分の弱みを見せられるのも、それだけ上島さんの人としての器が大きいからだ。

 実際、有吉さんの再ブレークのきっかけになった「毒舌芸」は、この竜兵会でのやりとりを通じて密かに磨かれていたと言われる。上島さんに冗談でわざと失礼なことを言ったりするのも、一線を越えると本気で怒られてしまう。そうならないように、ギリギリ笑いになるラインを見きわめる訓練をしたことで、有吉さんの毒舌芸が精度を増していった。竜兵会がなければ、今の有吉さんの地位はなかっただろう。