今年5月にフランス大統領に選出されたエマニュエル・マクロンは、きょう12月21日が誕生日である。1977年生まれなので、一つ歳をとってもまだ40歳。39歳での大統領就任は、19世紀に40歳で大統領となったナポレオン3世よりも若く、フランス史上最年少だった。

「金融のモーツァルト」

 その経歴はフランスのエリートそのものだ。出身はフランス北部のアミアンで、医師の家庭に育つ。高級官僚養成校の国立行政学院(ENA)で学び、卒業後、財務監察官を経てロスチャイルドグループの投資銀行に入り、大規模な企業合併を手がけ、「金融のモーツァルト」と呼ばれた。2012年に大統領府入りし、政界へ進出。14年にはオランド大統領のもと経済相に抜擢され、規制緩和に取り組むも、労組を支持基盤とする与党・社会党内から批判があいつぎ、昨年8月に辞任した。この間、昨年4月には中道路線の政治運動「前進(アン・マルシェ)!」を旗揚げ(大統領就任後、政党「共和国前進」となる)、11月には大統領選への出馬を表明していた。ちなみに、高校時代の恩師で、24歳上のブリジット夫人とは、両親から猛反対された末、07年に結婚している。

39歳で大統領に就任 ©getty

なぜ支持率が急落したのか

 大統領選では、「自国第一主義」を掲げる右翼政党・国民戦線のマリーヌ・ルペンに対し、親EU(欧州連合)を強調、大差で破った。就任の翌月に行なわれた総選挙(国民議会選)でも「共和国前進」が大躍進する。しかし、マクロンが経済再建のため推進する政策は、多くの国民の痛みをともなうものであり、必ずしも人気を得ているわけではない。支持率も就任から2ヶ月足らずで急落する。とりわけ雇用規制緩和を旨とする労働市場改革に対しては労働者や学生が反発、9月にはフランス全土で大規模なデモが行なわれた。マクロンは改革に反対する人々を「怠け者」などと呼んだため、デモでは「私は怠け者です」と、彼の傲慢な物言いを批判するプラカードが目立ったという(「『ニューズウィーク日本版』オフィシャルサイト」2017年9月14日)。

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「威厳ある偉大な大統領」が裏目に?

 マクロンが理想とするのは「威厳ある偉大な大統領」だ。そのため公の場であまり発言せず、記者ともほとんど会話はしない。就任直後には、国防費削減を批判した軍トップを公式の場で叱責したこともあった(「WEDGE Infinity」2017年9月28日)。そうした態度も、マクロン不人気の要因となっている。今後、国民の支持を得るには、政策を着実に実現し、フランスの再生をはたすことしかないのだろう。さて、彼は「偉大な大統領」として歴史に名を残せるのか。試練はまだ始まったばかりである。

マクロン大統領と24歳年上のブリジット夫人 ©getty