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2022/05/20

取材中に笑顔がフッと消えた瞬間

 2017年12月に担当した前述のインタビューでは、10代の頃から西田敏行に似ていると自覚し、こんな俳優になりたいと憧れていたこと。ふいに飛び出す、山城新伍の名前。数々のネタとリンクする人生のあれこれを上島本人から聞く興奮で、どうにかなりそうだった。

「逆バンジー・ジャンプは最初にやる人が小さく飛んで、次の人が普通に飛んで、最後に俺が飛んで全裸になるから面白い。要はコント。俺の前にフリの人がいて成立するんですよ」と、笑顔がフッと消えて真摯にリアクション芸について話す姿には、なんだかプロの凄みのようなものを感じた。

 続けて、そうしたリアクション芸の基本を学ばせてくれたビートたけしとたけし軍団、ダチョウ倶楽部としてコントを披露する機会が減っていることを悟って『バカ殿』に招き、夜の街にも引っ張り出してくれた“師匠”志村けんへの感謝とともに「人に恵まれている」としみじみ語っていた。

©文藝春秋

 さらに、「松本人志さんからリスペクトされていますよね」と尋ねると「リスペクトはしてないと思うよ」と、すぐさま否定していたがとびっきりの笑顔を浮かべていた。

 2時間に及んだ取材は、笑いが絶えず、穏やかなムードに溢れていた。テープを聞き返しても、それは間違いない。

 だが、上京してから賃貸住まいを続けているという話題になった時に「賃貸だから、そこで死んだら迷惑かけるじゃん。だから死ぬ時は病院で、と。次に入る人が嫌でしょ。そこだけはね、ちょっと気を遣ってるけど」と話しているのを耳にしてハッとなり、途端に涙が溢れてきた。

 あくまで賃貸居住者としての心構えを語ったに過ぎないのに、どうしようもなく悲しく聞こえてしまうのだ。

 上島竜兵、61歳。代表作しかなかった。つくづく、そう思う。

◆ ◆ ◆

【厚生労働省のサイトで紹介している主な悩み相談窓口】

▼いのちの電話 0570-783-556(午前10時~午後10時)、0120-783-556(午後4時~同9時、毎月10日は午前8時~翌日午前8時)

▼こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556(対応の曜日・時間は都道府県により異なる)

▼よりそいホットライン 0120-279-338(24時間対応) 岩手、宮城、福島各県からは0120-279-226(24時間対応)

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