深浦 あのとき藤井さんはタイトル戦に出ていて、やはり対策はNHK杯の早指しがメインではないですよね。だから、その間隙を縫えたというのはありましたよね。
遠山 将棋は完璧でしたよ。有利になってからは、ずっと深浦九段がよくなっていって完勝だったなと思いました。
深浦 感想戦のときに藤井さんが、机に突っ伏す感じになりましたよね。自分から見ると悔しがっているのかなと思ったのですが、横からのカメラで見ると、手が動いていたみたいですね。
――変化を考えていたと。
深浦 そうですね、急所の局面で、どうやればよかったのか反省する時間だったんですね。それをファンの方から指摘されて、改めて藤井さんはすごいなと思いました。全国放送のカメラがある前で、形を気にせず反省という時間に入っていたんですね。
――深浦先生は驚きましたよね。
深浦 そうですね。これから感想戦というときに目の前の方が、視界からいなくなってしまったので。
――そうですよね(笑)。ではつづいてアンケート3位の対局は、棋王戦挑戦者決定トーナメントの佐藤康光九段VS郷田真隆九段でした。遠山先生、これはどういう将棋でしたか?
遠山 佐藤九段が棒銀をやったんですが、普通の棒銀は飛車がいるほうの銀を繰り出すわけですね。
――それはそうですね。
遠山 当たり前ですよね(笑)。ところが佐藤九段は、飛車がいないほうの銀を繰り出していって、その銀1枚で相手陣を突破しようとしたんです。ただ、そこから二転三転して、二人の力がぶつかり合った。序盤のインパクトがすごいんですが、終盤もすごく面白い将棋でしたね。
深浦 AIの評価値だと、序盤は佐藤九段の評価は低いんです。でも将棋って面白くって、こういう出だしでも、最後はどっちが勝つかわからなくなる。
――コメントもご紹介しますね。
佐藤康光先生による、暴銀戦法といわれている対局。将棋の可能性を大きく広げてくれた棋譜だと思います。おとなしく収めて平凡な戦いにもできただろうに、あえて受けて立った郷田先生にも感謝です。こういう将棋も観たいんだ。(29歳/男性)
――たしかにこういう将棋も観たいですね(笑)。あと気になった対局などありますか?
「あまりにこの将棋が面白くって、この夜、寝られなくなったんですよ(笑)」
遠山 女流ABEMAトーナメントのチーム西山とチーム里見の対戦は、4勝4敗で迎えた最終対局がリーダー対決になったんですが、これがばつぐんに面白い将棋でした。終盤もどっちが勝っているか全然わからなく、最後、里見さんが詰ましにいったが、わずかに詰まなかった。私は、あまりにこの将棋が面白くって、この夜、寝られなくなったんですよ(笑)。
――この対局にはファンの方からコメントもきていました。ご紹介します。
4勝4敗となり決勝進出をかけたリーダー対決。藤井猛九段も「僕はこれが見たかったのよ」とコメント。詰むや詰まざるやの終盤にドキドキ。女流ABEMAトーナメントの格を上げた一局。(43歳/男性)
――深浦先生は、他に印象に残った対局はありますか。
深浦 タイトル戦だと竜王戦、棋聖戦と挙がっていますが、王将戦もかなりいいシリーズでしたね。藤井聡太さんについていえば、昨年度の竜王戦と王将戦がどちらもストレート勝ちで終わったというのが衝撃的でした。王将戦の全4局も、藤井さんが渡辺さんを圧倒していましたからね。圧巻の内容でした。
遠山 たしかに驚きですよね。
――では、そろそろ名局賞を決めたいところですが、どうしましょうか。