新年度が始まり、1カ月が経った。

 小学生になった長女は1人で登校していき、幼稚園児になった次女を送ると、家は驚くほど静かになる。日が高いうちに家が静寂に包まれることなど、この6年間ずっとなかったのだ。

 まだバタバタしている部分もあるが、家族4人それぞれが少しずつ新生活になじみ始めている。

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いちばんの変化は女流名人リーグへの復帰

 女流棋士としても4月から改めて1年が始まった。

 春の時点で昨年度とは大きく違うのが、今年度は女流名人リーグに参加していることである。それにより、昨年度よりも対局数自体が増加することが予想され、今年度のスケジュール管理は嬉しい悲鳴を上げることが予想される。

 女流名人リーグとは、全女流棋士のうち10名のみが戦うことができる、狭き門のリーグだ。総当たりで全9局行われるこのリーグで1位になった女流棋士が、伊藤沙恵女流名人への挑戦権を得る。

 当然参加するのはそうそうたるメンバーで、今年度は里見香奈女流四冠、西山朋佳女流二冠、加藤桃子清麗とタイトルホルダーが名を連ねている。他にもほとんどのメンバーが20代の指し盛りで、必然的に厳しい戦いが待ち構えていることになる。

忘れられない出雲の雪

 女流名人戦は思い出が深い。

 過去に2度、里見香奈女流名人(当時)に挑戦し、どちらも2-3のフルセットで敗れた。

 2度目の第43期女流名人戦五番勝負では、第2局の出雲対局で大雪にみまわれて帰宅できなくなるという、稀な体験もした。

 出雲で下馬評を覆す開幕2連勝スタートを決めた翌朝、窓のカーテンを開けると、視界が真っ白だった。

帰宅できなかった日の出雲の雪

 飛行機は飛ばない、電車なら、と駅まで行って車両にも乗ってみたが動かない。「これは帰れませんね」となったところで、家にいる夫に電話をかけた。

 当時はまだ長女が1歳になりたての頃で、この女流名人戦が初めての私の単独出張だった。

「雪がすごくてさ、家に帰れないんだよね」と伝えると、「いや、もう無理なんだけど」と返ってきた。まぁそうだろうな、と思いつつもこちらも無理なのだからしょうがない。

 私が悪いわけではないが、「ごめんね」と言い(※夫婦円満重要事項)、2泊3日が3泊4日になった。

 東京へ帰る手段を失った私たち一行は、雪が降り積もる中、なぜか観光に出かけることにした。