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“藤井キラー”が目撃した、藤井聡太竜王19歳の素顔「悔しがっているのかなと思ったのですが…」

“藤井キラー”が目撃した、藤井聡太竜王19歳の素顔「悔しがっているのかなと思ったのですが…」

観る将アワード2021/2022 レポート #1

2022/05/21
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――日光東照宮で(笑)。

深浦 はい(笑)。「チームメイトに選ばせていただきました。よろしくお願いします」というメールだったんですけど、早速ご利益あったよーと家内と喜んで。

遠山 早いご利益ですね(笑)。

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――豊島さんから指名される予感はありました?

深浦 まったくなくて。昨年度のチーム菅井での成績が惨憺たるものだったので、もう今年はないだろうなって思っていました。

――ドラフトのときに「藤井さんキラーとして」と豊島先生が言っていましたが、あの場面も番組で初めてご覧になった?

深浦 あれも番組で初めて知りました。あのとき藤井さんが笑っているというのも面白かったですね。

「地球代表」に加えて「藤井キラー」としても有名に ©石川啓次/文藝春秋

――まだ出番は先ですが、もうチーム豊島で集まったりしていますか?

深浦 連絡を取り合ったり、研究会をやったりはしています。

――チームメイトとして接してみると、豊島さんはどういった人ですか?

深浦 これ豊島さんファンの方はしっかり聞いてもらいたいんですけど(客席から笑い)、豊島さんって頼もしいんだなって感じますね。研究会などで、チームメイトの丸山さんも私もそれぞれ意見は言うんですけど、最後は豊島リーダーが、じっと2、3秒考えられて、あ、このときには豊島さんと目が合ってます。

――見つめあって(笑)。

深浦 はい(笑)。そのあと「これがいい」とズバッと言ってくれるので、チームがまとまっていきますね。豊島さんは自分の考えがあって、かつチームメイトの考えも掬い上げてくれる人なんだって感じています。

――豊島さんは、今まで同年代か年下の方とチームを組んできましたけど、どういう心境の変化なんですかね。

深浦 藤井聡太さんも年上の方を指名したりして、何が起きているのかわからないのですが、ありがたいことです。

遠山 豊島さんも、きっと深浦九段から学びたいと思って選んでいるんでしょうね。いい光景だなと思って見ています。

藤井さんがいなければ、今、最強と言われていてもおかしくない

――もうひとりの第2位が渡辺明名人です。コメントご紹介します。

 名人として安定した成績を残されたから。藤井聡太五冠への巻き返しも期待しています。(43歳/男性)

――渡辺名人についてはいかがですか?

遠山 昨年度でいえば2つ防衛して1つ取られて、1つ挑戦に失敗。8つあるタイトルに4つ出ているんですね。

渡辺明名人(左)は、現在、名人戦七番勝負に望んでいる(写真提供:日本将棋連盟)

――そう考えるとすごいですね。

深浦 本当にすごい。

遠山 にもかかわらず、若干、影が薄めなのはなぜでしょうか(笑)。

――本当ですね。

遠山 藤井さんがいなければ、今、最強と言われていてもおかしくないと思いますよね。名人戦は、今のところ2勝0敗ですよね。挑戦者の斎藤さんがA級を2年連続8勝1敗という好成績ですから、さすがに今回は名人も危うしと思っていたのですが、それだけに、なおさら強さを感じますよね。普通なら最優秀に選ばれても不思議じゃない。

――では、最優秀棋士を決めましょうか。これは、これだけの成績だと文句のつけようがないですよね。

現在、タイトル戦の対局で12連勝中の藤井聡太竜王(写真提供:日本将棋連盟)

遠山 そうですねぇ。

深浦 はい。

――では最優秀棋士は、藤井聡太五冠とさせていただきます。

受賞の言葉(師匠の杉本昌隆八段から代理コメントを頂戴しました):

 多くの支持をいただいての受賞、誠にありがとうございます。藤井聡太竜王に代わりましてお礼申し上げます。

 竜王戦第4局は私も現地におり、対局後の深夜に藤井新竜王の感想をたっぷり聞くことができました。好奇心に満ちた少年のような表情が印象的で、充実の対局であったことが伝わってきました。

 トップ棋士のプライドや意地がぶつかり合い、そこにドラマが生まれます。観る将ファンの皆様には、今度も沢山将棋を楽しんでいただけますようお願い申し上げます。

最優秀女流棋士 分厚い女流トップに挑み続けての念願

――続いて、最優秀女流棋士賞です。アンケートの結果は、このようになりました。

1位 伊藤沙恵女流名人
2位 里見香奈女流四冠
3位 西山朋佳女流二冠

――1位は、伊藤沙恵女流名人です。伊藤沙恵さんは、念願のタイトル獲得となりました。

遠山 タイトル挑戦9回ですか。

深浦 長いね。

遠山 ちょっと想像できない世界ですね。

深浦 木村一基さんと重なって見えますね。

9度目のタイトル挑戦で悲願を達成した伊藤沙恵女流名人(写真提供:日本将棋連盟)

――奨励会にも長くおられたんですよね。

遠山 年齢制限も迫るなかで周りに女性も少なく、精神的には辛いですよね。その後、女流棋士に転向されたときにみんなで食事を一緒にする機会があったんですが、そこで晴れやかな表情をされていたのが印象に残っています。いろいろ苦労も多かったと思いますが、それが涙につながるんでしょうね。