後輩、先輩、家族……まわりの人たちの気持ちを結果に変える
5月30日、23歳の誕生日を迎えた。普段から鵜飼のことを「うーたん」と呼ぶ岡林が、動画係の福島章太投手を連れ、寮の部屋へ突然やってきた。3歳下のやんちゃ少年はいきなり部屋の電気を消し、唐突に巨大なクラッカーで「誕生日おめでとう!」と祝福。その後、部屋で棒立ちになる鵜飼の正面で、小さい祝音クラッカーを5発鳴らし、最後は部屋に散乱したゴミを3人で仲良くお片付けした。車好きの鵜飼のために用意されたプレゼントは、ミニカーのランボルギーニウラカンとパトカー。「現物はさすがに無理っしょ! 気持ち、気持ち!」(岡林)。
岡林と同じ高卒3年目、石川昂弥選手とは、同時期に新型コロナ感染で隔離を余儀なくされた期間、頻繁に連絡を取って励まし合っていた。思わぬ故障で離脱となった後輩に対しては、「コロナが明け、お互い頑張ろうぜと話していたタイミングだったので……。昂弥も絶対に悔しいと思う。昂弥が帰ってくるまでなんとか必死にくらいついて、打ち続けていたい」と気遣った。
「球界を代表する右の長距離砲になる」。揺るがない夢は、行動にも現れた。西武戦では一塁に出塁したとき、同じミズノ社の道具を使う山川穂高選手に「バットください」と直接お願い。球団関係者を通じてバットを受け取り、インスタグラムのメッセージでお礼を伝えると、惜しむことなく打撃のアドバイスもくれた。入団時に「憧れ」と話したカブス・鈴木誠也選手や、巨人・岡本和真選手を自らの将来像と重ね、チャンスがあれば近い将来、合同自主トレを志願したいとひそかに考えている。
同級生、先輩、後輩。プロ入りしてできたライバルであり仲間たちが、単調になりがちな日々の刺激になっている。新型コロナで隔離中も、家族が隔離場所まで食事を運んでくれたり、友人から「551蓬莱」の豚まんが届いたりするなど周囲の配慮に感激。「より良い結果を出す」という気持ちがどんどん高まった。
ドラゴンズの選手が本塁打王を獲得したのは2017年のゲレーロ(35本)、日本人に限れば1996年の山崎武司(39本)までさかのぼる。無限のパワーに首脳陣も、仲間も、ファンも、記者も胸を躍らせる。鵜飼ならきっと「キング」を獲れる。
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