仏マクロン氏・独シュルツ氏は裏切り者のイギリスには厳しく当たるだろう
どのように通商協議が進められるかを大胆に予測すると、「人の移動の自由」については、たとえば90日間は移動の自由を100%認め、それを超えた場合は国民保険に登録、雇い主から労働許可証を発行してもらうような新たなアレンジメントが必要になる。
単一市場と関税同盟については、北アイルランドとアイルランド国境に税関は復活させないと確約しているので、モノの関税同盟はほぼ、そのまま踏襲した上で、金融やデータといったサービス分野である程度EUからの自由度を確保できれば上出来だろう。
ドイツのメルケル首相がドイツ社会民主党(SPD)のシュルツ党首との「大連立」交渉に成功すると、フランスのマクロン大統領と三人四脚を組むことになる。おそらくEUは仏独が主導して「競争」より「分配」に舵を切る。そしてマクロン氏もシュルツ氏も結束を乱した裏切り者のイギリスには厳しく当たるだろう。
メイ首相はドイツの利益を損なわないようにすることが肝要
メイ首相はドイツの利益を損なわないようにすることが肝要だ。ドイツはEUを低賃金労働者の供給源でこれ以上ないサプライチェーンとみなしている。離脱後もイギリスにはEUへの拠出金を負担してもらいたいとも考えている。
イギリスは国際金融都市ロンドンのEU市場へのアクセスをどこまで確保できるのか。98%の商品に対する関税を撤廃したEUとカナダの包括的経済貿易協定(CETA)をモデルにしてサービス分野を上積みしていくことが課題となる。
EUへのアクセスを維持するためには、EUとの「レギュラトリー・アライメント(規制上の整合性)」が不可欠になる。結局、大変な苦労をしてEUを離脱してもEUの規制に合わせていかなければならない。「それなら数百億ユーロの清算金を払ってまで何のために離脱するの」という疑問に対する答えは永遠に見つからないだろう。