次に足の指の間に、反対側の手の指を入れて組みます。初めてだと、痛くて手の指を入れられない人も少なくありません。筋肉は使っていないと弱って硬くなってしまいます。そうなっている足の指に、いきなり頭で「開け」と思ってみても、手の指を広げるようにはすんなり指示が通らなくなっているのです。
手と足の指が組めた人は、手と足の指で握手をしましょう。足の指に力を入れて、手をギューッと握って……。
それでは空いている方の手で、グーにしている足の指を、1本ずつ触っていってください。
触ってみたら握れていない足指がありませんか? 指先がぐらつく指は、脳と指の筋肉がきちんと繋がっていません。
ですので、その足指に力が入るように練習していきます。人差指なら人差指、中指なら中指に意識を集中すると、少しずつ脳の指令が通るようになって、力が入るようになっていきます。それは足の筋肉が鍛えられるからというより、使っていなかった足の指を動かす脳が活性化されるからなんですね。
きくち体操が「脳」を使う、というのはこういうことです。
この「手と足の指の握手」を毎日やって脳を使い、足の指1本ずつを感じながら動かしましょう。この足で最後まで立って生きられるように。うまくできるようになっても、ちょっとサボるとあっという間に元通りです。足の指を使えていないと歩き方が崩れるし、全身が衰えていってしまいます。
「手と足の指の握手」は、老若男女関係なく、脳と足の指が繋がっていないとできません。
特にハイヒールばかり履いている女性にはできない人が多いです。そういう人は骨盤底筋も弱っているので、若くても尿もれに悩まされています。体操を続けると改善して、後から「実は……」と打ち明けてくれるのですが、若い人が尿もれパッドをしている時代というのはかつてなかったこと。おしっこをコントロールできないというのは赤ちゃんや認知症のお年寄りがオムツをしているのと同じ状態です。生きる力が弱いわけで、その先の長い人生が心配になります。
原点は動かない手
88歳の誕生日に、私が生まれた当日の新聞のプリントをいただいたのですが、「軍刀で自殺を図る」だとか時代がかった記事ばかり。今もピンピンしているのが自分で不思議なくらい、年季が入っているんです(笑)。
子どもの頃はずっと、戦争ばかりでした。
私は秋田県仙北郡豊川村(現・大仙市)出身。武家屋敷で有名な角館の近くです。父は国民学校2年生の時に出征して、後に奇跡的に復員しましたが、母は3年生になるかならないかという頃に亡くなりました。胃がんだったと思います。
母方の祖母に預かってもらいましたが、その時分には村中の男の人が戦争に取られて、病気の人を除いていなくなっていました。馬を使って田を起こすとか、あらゆる野良仕事を女性だけでやっていたんです。
そんな状況だから、子どももろくに学校へ行っていられない。田んぼの草むしりに駆り出されました。