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 それと同時に「二重に振り込まれている」と住民から役場に通報があった。当時の人口は約5500人。「住民の顔が見える村」ならではのことだろう。

 JAはすぐに振り込み作業を停止したが、この日に予定していたのは375世帯1162人分(1億1620万円)だった。

ミスの原因は何だったのか?

 総務課ではすぐさま職員が手分けして、申請書に記された番号に電話を掛け、「そのまま口座に残しておいて下さい」とお願いした。「ほぼその日のうちに全員と連絡がつきました。何が起きたのか説明してほしいという人には、職員が訪問しました」と前出の総務課員が語る。

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 誤って振り込まれたうち、35人分を除いては、翌日までに金融機関で戻す手立てができた。「現金で返したいという村民もいて、職員が受け取りに行きました。こうして3週間後の6月8日には全額が戻りました」。

 原因は二重のデータ作成だった。同じデータを2日間にわたってJAに渡していたのである。

「村には事務職員が60人弱しかいません。出納担当は2人。結果としてはチェックが不十分でした。その後は出納室だけでなく、他の課でも改めて確認するようにしました」と総務課では説明する。個人情報が絡むデータは少数で取り扱うのが原則だが、誤りをなくす確認作業は課をまたいで行うことにしたのだった。

寝屋川市では1000世帯近くに「二重振り込み」

 一方、金融機関で食い止められなかった自治体もある。大阪府寝屋川市だ。市のチェックで翌日振り込まれる1000世帯分近くが「二重振り込み」と分かったが、銀行では既に処理が終わっていた。

 寝屋川市で支給ミスが表面化したのは2020年5月21日の振り込みだ。金額が「足りない」と市民から連絡が入った。給付金は世帯ごとに代表者に一括して振り込まれる仕組みになっているのに、額が世帯人数分に足りなかったのだ。そこで、翌日にチェックすると、5月21日分の振り込みでは195世帯が「過少振り込み」になっていた。

 その後、全データを検証すると、5月26日に振り込む予定にしていた993世帯2196人分(2億1960万円)が二重になっていると前日に分かった。市は急いで止めようとしたが、前述したように無理だった。

 原因は市が独自に構築したコンピュータのシステムだ。

 当時の寝屋川市には23万人を超える人口があり、手作業による配付作業などできるはずがなかった。このためシステムを使って配付データを作成したのだが、コロナ禍で企業活動が抑制され、外部に委託すると時間が掛かると分かった。そこで、エクセルを活用し、職員がシステムを作った。「少しでも早く配付したい」という思いからだ。

 システムには二重給付を避けるため、振り込みを終えたデータと突き合わせて、重複があれば弾く仕組みを採り入れていた。ところが、993世帯分については振り込みデータが登録されていないという不具合が生じていて、突き合わせができなかった。