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どんなに勉強したってかなわない相手がいる。教科書をパッと読んだだけで、教師の話をさっと聞いただけで、すべてを、いやそれ以上を理解してしまう人たちだ。彼らは幼いころ、神童と畏敬の念をこめて呼ばれていた。
神童は大人になってどうなったか。願わくば、頭の良さを生かして、社会のために役立ってほしいところだが、小泉純一郎の迷フレーズ「人生いろいろ」である。そこで、新刊『神童は大人になってどうなったのか』(太田出版)では、愛すべき神童たちを追いかけてみた。みなさんにたいへんな敬意を表しつつ、敬称略をお許しください。
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灘中学・高校。神童の宝庫である。指折りの天才、秀才が集まった。
なかでも1979年卒業生の面々には、やたらと濃いキャラクターが集まった。勝谷誠彦、和田秀樹、中田考、吉田尚正、宮園司史、井内摂男、西川知一郎、伊藤芳朗、飯泉嘉門。彼らは1960年、61年生まれ。わたしと同学年だが、まるで別世界に住む人たちに見えた。
勝谷は文春OBのコラムニスト。灘中学に1ケタで合格するほど神童ぶりだった。ということは日本でもっとも頭がよい小学生の1人だったわけである。たが、灘高卒業まで成績はふるわず、1年浪人して早稲田大第一文学部へ。編集者、作家、コメンテーターなどとして活躍。憲法改正で自衛隊整備など保守的な主張を繰り返し、ときに市民運動を「左巻き」と批判する一方で、権威主義を徹底的に嫌う。今年、兵庫県知事に立候補し64万票集めるものの、当選はかなわなかった。速射砲のようなしゃべりまくりは実におもろい。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属はだてじゃない。
勝谷と灘在学中に全くそりが合わなかったのが和田秀樹である。よほどくやしい思いをしたのか、最近まで勝谷をSNSで罵倒していたが、『感情的にならない本』を出してベストセラーになった。東京大理科III類、医学部という受験の最高峰を歩み、精神科医のかたわら、受験のマニュアル本を数多く出している。数学は解答を丸暗記して頭にたたき込むと指南して、東大受験生に勇気と希望を与えた。
和田と灘中学受験のために同じ塾に通っていたのは、中田考だ。東京大文学部イスラム学科出身。ムスリム名ハサンのデビューは鮮烈だった。ISの支配地域に何度も足を運び、IS幹部との知己を得、日本人人質事件では交渉役を買って出るなどしたが、逆に警察から睨まれてしまい、公安担当から事情聴取を受け、家宅捜査までされてしまう。だが、イスラム学者として、イスラム教文献の翻訳は世界で高い評価を受けている。
中田を捕まえる立場になるかも知れないのが、吉田尚正である。警察官僚で、今年9月に警察庁刑事局長から第94代警視総監に就任する。勝谷とは「おまえ、警視総監やれや」「まあな、機会があったらな」というやりとりがあったようだ。2020年の東京オリンピック開催に備え国際的なテロの対策責任者となる。当然、中田の動きも気になるところか。
もう1人、警察官僚がいた。元広島県警察本部長の宮園司史だ。2014年、オバマ米大統領の広島訪問に伴う警備で陣頭指揮をとった。その後、警察庁長官官房となり、最近、退職している。