典型的な例は日本学術会議の任命拒否だ。税金をもらっているなら国民の代表者である政治家の言うことを聞け、でないと任命できませんよというわけである。これも眞子さんへのバッシングと五十歩百歩だろう。これらバッシングする側に共通しているのは、使われた税金が自分のお金だと錯覚していることである。
眞子さんと小室さんがこれほど非難されたのは、眞子さんが皇族だったからだ。おそらく憲法第1条に「天皇は……主権の存する日本国民の総意に基く」とあるのを誤解したのだろう。つまり、天皇と同じように皇族も国民の総意に基づくのに、眞子さんの結婚相手は国民の総意に反しているではないか、と。しかし、これは天皇制というシステムのことを定めたのであって、一皇族の生活に言及しているわけではない。それを曲解されたのだ。「眞子さんに一時金を払うな!」なんて本気で思っていた国民がどれほどいたのだろう。
なぜ皇室は税金で維持されるようになったのか?
それにしても、なぜ皇室は税金で維持されるようになったのだろうか。
日本が戦争に負ける直前の皇室には、現在の金額で数兆円といわれる財産があった。戦争に負けたことで、皇室に大金を持たせては権力を乱用するから危ないというわけで、日本を占領したGHQは、莫大な皇室財産に課税して解体し、国に移管させた。戦後の国民は、その財産を享受してきたはずだ。例えば、皇居外苑を散歩したとする。自由に出入りできるのも国に移管されたおかげなのである。
皇室が税金で支えられるようになったのはわずか75年前のことである。それも皇室が自ら望んだことではなく(昭和天皇は認めたが)、GHQという外国の軍隊によって強制されたことを、当時の国民が認めたということだ。その結果、「皇室の藩屏」といわれた旧宮家を臣籍降下させて直宮家だけにシェイプアップし、天皇家を中心とした皇族の生活と皇室の維持を税で賄うことにしたのだ。最初から税金で賄われていたわけではない。
ちょうど眞子さんは一時金を辞退すべきだといった意見がかまびすしかった頃だったが、「天皇家はお金持ちだし、秋篠宮家だって財産はあるんだから、援助してもらえば贅沢な暮らしは十分できるんじゃないの」といったようなことが言われた。