日本一ブレない新聞といっても過言ではない。浅田真央さんが現役引退を宣言しても、サッカー日本代表が逆境を乗り越えてワールドカップ出場を決めても、デイリースポーツの1面トップは阪神タイガースで揺るがない。
日々、猛虎ファンの心をギュッとつかむ紙面をつくっているスペシャリストは、今期のタイガースをどう見たのか。デイリースポーツ報道部の玉森正人スポーツ担当部長がつづる。
【重大ニュース1】虎史上、最大点差の逆転勝利
ゴールデンウイーク中の土曜のデーゲーム。5月6日の甲子園での阪神対広島戦が、2017年金本阪神の、ベストゲームだろう。
5回表が終わって0-9。デイリースポーツ編集局内には、阪神戦を映し出すテレビが何台も設置されているが、「勝負あった」とばかりに、そのモニターに目を向ける者はほとんどいなかった。
デーゲームは試合終了時間が早く、紙面製作の時間が、ナイトゲーム時よりはるかに多くある。いろんな工夫を紙面に凝らすことができるが、それも阪神が勝ってこそ。編集局内のモチベーションは急降下、いやそれどころか、チケットを購入して甲子園につめかけたファンの気持ちを思うと、つらいやら、ふがいない選手に腹が立つやら。
5回裏に1点を返す。それでも、空気に変化はない。6回裏、1点、2点と追加していく。それでも、変化はない。原口押し出しで5-9。ここで、ようやくテレビの前へ移動した。
「もしかして」。こういう淡い期待は、裏切られることが多いが、この日は違った。高山の3点打で1点差に。そして7回裏。新人糸原の適時打で同点とし、梅野の一撃で、ついに試合をひっくり返した。終わってみれば12-9。虎史上、最大点差の逆転勝利となった。
「どのシーンか忘れました。いっぱいありすぎて」。金本監督は、試合後の矢継ぎ早の質問に、こう答えた。チームの勝利はもちろんうれしいが、それが将来をも見越せる勝利ならば、ファンはなおうれしい。若手が必死につなぎ、ベテランが仕事をし、最後は若手が決めた。翌朝のデイリースポーツは1、2、3、4、5、終面と6個面の大展開で、この勝利を伝えた。