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瀬尾 瀬戸内は作家として才能があっただけでなく、人に優しく、本当に温かい人でした。私は、そんな瀬戸内の人間性に惚れていたのだと思います。だから「この人のために頑張りたい。この人を守りたい」と、自然に身体が動きました。
瀬戸内はぎりぎりまで私のことも心配してくれていて、「私が死んだらちょっとぐらいはあんたにも仕事あると思うよ」とも話していました(笑)。
「生意気」「失礼」と言われてもありのままでいた理由
――瀬尾さんが寂聴さんに惹かれたきっかけとなるような出来事はありますか。
瀬尾 今思えば、初めて会ったときから魅了されていたと思います。でも私はなにも瀬戸内のことを知らなくて、「あの尼さんかぁ」くらいの認識でした(笑)。
そんな自分が10年間、秘書としてそばにいさせてもらうことになるなんて、人生は本当にわかりませんね。
――ただ、寂聴さんにツッコミを入れられる存在は瀬尾さんだけだったのではないでしょうか。
瀬尾 瀬戸内の前ではありのままでいたいと思っていました。おかげで「生意気だ」とか「失礼じゃないか」とよく言われました。
でも、ごまをすったりいい子ぶったりしてもすぐ見抜くような人です。私は私のまま、瀬戸内を一番大切に考えたかった。それを瀬戸内も受け止めてくれていたのかな、と思います。